第3話 今日から

身軽ななりで、リリはカバン一つで私の部屋に訪れた。

荷物は追々、つけられていることがないように運び込むらしい。目立つようなことが無いように気をつけてくれたようだ。


ふーん。と入って来るなり部屋をじろじろ見渡して、


「まあいいでしょう」


と上から目線で言った。それなりに片づけて、部屋にベッドを入れてあげたのだから感謝してほしい。と思ったが、報酬をはずんでもらっているのだから言える立場にない。



「ところで疑問なんだけど、あの報酬。あなた何であんな大金払えるわけ?」


私は素直に気になった質問を投げかける。私より一回り年下の子が大金で人を雇うなんて信じられない。


「あなたって呼び方なんか冷たいです。リリって呼んでください」


「えー、考えとく」


「報酬については、私はこう見えて稼いでいるってことです。専属で雇われてるんで。収入はありますよ、忙しくしてて使う暇がなかったので。それで、この機会に使おうかと。簡単に説明するとそう言うことなんですが……」


かぶっていたニット帽を脱ぐと、彼女はの髪は肩の先まであって、やはりブラウンだった。

さして手入れしているわけでもないだろうのに、髪には艶があってさすが若さにはかなわない。



「あなたは、東側組織から命を狙われていて、そこからあなたの身を守るのが私の仕事なんだよね?なんで雇われてる組織から命を狙われるわけ?なんかした?」



「詳しく聞かせて」と言って彼女の肩に手を置いて、ソファーに誘導した。

この前も思ったが、彼女の華奢な体と私より低い身長と一回りは下の年齢のせいで、フランクに肩に手をかけてしまう。

続きを促して目配せする。隣同士座ると、リリは話始めた。


話はこうだった。

リリが属している組織はブラックリザードと言って東の地域一帯を取り仕切っている。

対して西側をバフォメットという組織が仕切っている。

リリの属している東側組織には2人の次期頭首候補がいて、その頭首争い、ブラックリザード内の争いに巻き込まれたということらしかった。早い段階でどちらの党首候補に着くか決めるものだが、どちらにも着かないでいたら相手側とみなされて、脅しだと思うが向こうに付くならと消されそうになったということらしかった。もう一方の側にも自分側に着くよう追われ続けているらしい。そうリリは話した。


「それで当分身を隠して、私に警護してほしいってわけか?それ、もう一方の味方に引き込もうとしている方に行ったらいいんじゃない?脅しでも命狙ってるかもしれない奴らと組めないでしょ」


この華奢な体で組織にいること自体やめた方がいいとは思うけれど、専属というくらい腕が立つのだから余計なお世話だろうか。この体で危険な目にどれだけ遭ってきたのだろう。無意識に彼女の肩をさすっていた。


「まあそうなんですけど。引き伸ばしておきたいんです。頭首が決まれば落ち着くでしょうし。いつまでも東側の内部で争いを続けるわけにはいかないでしょうから、頭首争い自体そう長くかからないと思っています。どちらかが頭首になれば、他方は肩身が狭くなるか、最悪お払い箱ですし。どっちつかず、私はただ金払いで働くという印象のままでいいんです」


「なるほどね、ブラックリザードか……」


遠い記憶が蘇る。


「……組織のことが、どうかしましたか?」


「いや、なんでもない」


私がそこにいたことは、話さなくてもいいことだろう。もう昔のことだ。


「組織もわざわざ本格的に命を狙ってくることはないでしょう、無駄な労力でしょうし。ただ不意に見つかってしまうこともあるし、どうなるか読めないので、こうして警護してもらえればいざという時安心です。お金なら困ってないですし」


「わかった……気を抜かないように気を付けるから」


それにしても、お金なら困ってないか……そういうこと言ってみたい。なんて思った。




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