第3話

電車に向かう途中、彼女がかなりの世話焼きっていうことも思い出した。ある日児童の一人が熱っぽく咳が止まらない状態だった。その児童が別室に連れてかれ、布団を敷き寝かせた。その間も優子さんが熱を出した児童の汗を拭いたり、氷嚢を準備して、その児童が寝るまで付き添った。普通はある程度世話したら、その児童を別室に置いていき、寝たら寝たでちょくちょく様子を見る程度だったが、彼女はつきっきりでお世話をした。また、その間は彼女の担当してたエリアに別の人が入る必要があり、彼女はそれを考慮しないので、それはそれでバイト先では困りごとだった。今回はその世話焼が爆発したのだろうと、電車の席に二人で乗りながら、思っていたが、彼女は寝てしまった。

“おいおい、心配じゃないんかい。”

と心でツッコミをいれたが、彼女の顔をよく見ると隈が酷かった。そして、よく目尻を見るとまるで泣きじゃくったかのように腫れていた。

”これか、雰囲気が違った理由”

と納得し、続けて

“こんなのになってんのになんで世話焼などできるか”

と思った。そして家からの最寄りについたため彼女を起こした。彼女はゆっくり瞼を開き辺りを見回す。

“あれ、ここどこ?”

寝ぼけた声でそう言う。

“まじか”

と思わず呆れたが、彼女が付き添いすると言っていたので教えた。

“やだ。私寝てた?うわー恥ずかしい…”

と彼女は頬を赤らめながら、すぐに

“最寄り?今すぐ行こう”

とさっき彼女は寝ぼけてたのを仕切り直すようにホームに降りた。

“ホームまでいいよ。ここから全然歩いて帰れるし。”

”俺はこれ以上、自分のことなど知られたくない部屋に帰れば、無為な日常の終わりだ”

と思い、日が沈んだ静寂な世界に飲み込まれるように消えたいと感じた。だが、

”いいや、途中で倒れたら悪いから”

と彼女は念押しするかのように言った。

”いやそれは…”

一瞬、躊躇った。本当のことを言いたい。その衝動が体中駆ける。黒より黒く、全てを欲するような強欲が。

言いあぐねている間に、彼女は言った。

”ほら、否定できないでしょ”

彼女はしたたかに笑った。おそらく、自分の世話焼きが完遂できるからだろう。

彼女は俺の手を引いて、改札に向かった。暖かかった。

”ここって商店街の近くでしょ。いいとこに住んでいるね”

改札出て、寮まで来ることが彼女の中で決定したようだ。諦めて、彼女の望み通りに寮に向かうことにした俺は

”ああ、そうだね、ここら辺に有名なコロッケが売ってるらしい”

寮から出るのは、大学か、バイト以外ない俺はインスタで見た情報で、歯切れの悪い回答した。

”へー、今度行こうかな”

彼女はこの歯切れの悪い回答に気づかず、会話を続けた。さっきの躊躇いが、体調不良ということで気づかれていないようだ。

”あ、公園に遊具が置いてある!”

”いいなー、私の育った地域だと撤去されているんだよー”

そう言って、眩しいくらいの笑顔で俺に振り返った。

”ああ、そうだね、最近そうらしいね”

だんだん汗ばむ。

”ここ、良さそうだね子どもを育てるのに”

世話焼きな彼女がいかにも言いそうな台詞だ。

”ああ”

素っ気ない反応しかできない。だんだん冬の乾いた空気が強調される。

”もう、ここまでいいよ”

そう吐き捨て俺は走って逃げた。

”え…”

彼女は拍子抜けな反応をした。だが、気づいたら、走って逃げた俺は彼女の顔を見ないまま、寮に走っていった。息が上がり、汗ばむ感覚が全身を包む。部屋について俺は息を整えようと、ベッドに寝転がる。同時に陽物がそり上がっていた。混沌だ。そのプライベートな部分が勃起するのは久しぶりに見る。俺は手慰みした。久しぶりだったので、激しくなった。痛いほどに激しく擦った。そして、射精した。精液は床に散り、俺は快感が脳に達して、真っ白になった。そして、腕に切り傷をハサミでつけた。

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