第7話

冷たく静まり返った車内には、もはや誰の気配も感じられなかった。


乗客たちは、死に絶えていた。


凍てついた空間の中で、姫霧とプラスだけが生存していた。


電車は、終着駅に滑り込むようにして止まった。


しかし、ドアは開かない。


「……閉じ込められた?」姫霧はかすれた声で言った。


プラスは静かに周囲を見回し、車両の隅にある非常用のガラスケースを見つける。その中には、鉄製の斧が収められていた。


「これを使う。」


彼女は迷うことなく非常用ガラスケースを拳で叩き割る。鋭い破片が床に散らばるが、そんなことは気にしない。


斧を取り出すと、ドア横の非常開閉システムを力強く叩きつけた。


ガンッ!


硬い音が響く。


もう一度。


ガンッ! ガンッ!


機械の部品が弾け飛び、ワイヤーが露出する。電気が流れなくなったその瞬間、ドアが静かに開き始めた。


冷たい空気が流れ込んでくる。


「行こう。」


プラスが姫霧の手を引き、ふたりはゆっくりとホームへと降り立った。


終着駅は異様なほど静かだった。


人の気配がない。照明は消えかけ、駅の構造体が影となってうごめいて見える。遠くには、誰かが残した荷物が散乱していた。


姫霧は小さく息を呑む。


「……ここって?」


プラスは答えなかった。

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