序章 右遷、もしくは左遷[2]

AM_6:00_フィル教会日本支部

六時の鐘がなった。

その音で僕は正気に戻る。そして先輩に声をかけた。

「あの…どうしてこんなことを?」

先輩はその無駄にいい顔を面倒くさそうに、面白そうに歪ませて答えた。

「君なぁ、神父様がぁ、聖書を、読んじゃあいけないのカナ?」

ごもっともすぎる指摘である。

「いや別にないんですけど、」

「じゃあ良し。だけど、読んでたのは聖書じゃなくってこの手紙。ええっとねぇ内容は、

拝啓

啓蟄の候、物部様に置かれましてはますますご健勝のこと慶び申し上げます。

この度は貴方様の優秀さにおいてフィル教会本部に数年ほどお招きさせていただくことをお許しください。英国行きのチケットは同封してあるのでぜひお使いください。

だってよ、なんかあれだね、手紙書くの下手だし。」


「そんなことに文句を言わないでください。あくまでもお相手は外国の方ですし僕達より立場はずっと上ですし。」


そう言いながらチケットを覗き込む。そこには大きく日付が記されていて、ちょうど1週間後のものだった。僕は青ざめた。手紙の日付も見てみた。一ヶ月前に届いていた。

「先輩?」

「まぁ実力が評価されてよかったじゃん。てことでぼくちゃんはつかの間のハーレム気分を味わってるんで、バイバーイ」

「はぁああぁああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

僕は叫んだ。決して自分が悪いとは思っていない。その後、先輩の顔を殴ったことも。

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