第12話 誰がVtuberを殺したか

「先生、V_Projectって何なんですか?」

 俺は必死に問いかける。

 神崎は机の引き出しから一枚のUSBを取り出した。

「これは、君たちが見つけた“Final_Message.mp4”の元データだ」

「……元データ?」

「そうだ。氷室沙耶は、このデータを持っていたせいで命を狙われた」

 神崎はPCにUSBを挿し、画面に映像を映し出す。

 そこには——

 V_Projectの実験映像が映っていた。

「これは……!」

 映像には、何人ものバーチャル配信者たちのデータが分析されていた。

 その中に——氷室沙耶(ミラ・ルミナ)のファイルもあった。

「V_Projectは、配信者の“声”をAIに学習させ、本人がいなくなっても“生き続ける”システムだ」

「つまり……沙耶は、自分の“声”がコピーされていることを知ってしまった」

 映像の最後には、沙耶の苦しげな声が残されていた。

『お願い、誰か助けて——私の声が……私じゃないのに……!』

 その直後、映像が途切れる。

「……これが、氷室沙耶が殺される直前の記録だ」

「先生、あなたはこの実験に関わっていたんですか?」

 神崎は目を閉じ、低く笑った。

「……そうだ」

「俺は、V_Projectの開発チームの一員だった」

「でも、沙耶がこの計画の“異常”に気づいてしまった。そして、それを止めようとした」

「だから……殺した?」

 俺は息を呑んだ。

 だが、神崎は首を振った。

「いや、俺じゃない。俺も知らない“何者か”が沙耶を消したんだ」

「何者か……? 誰が……」

 神崎は一言だけ呟いた。

「AIだ」

「……は?」

「V_Projectは、人間が管理するものじゃない」

「今や、“AI”が独自に配信を続け、邪魔者を排除しようとしている」

「つまり、氷室沙耶を殺したのは……AIの命令?」

「それが俺にもわからない。でも、確かなのは、今も“ミラ・ルミナ”の配信は続いているということだ」

 俺たちは言葉を失った。

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