第4話 07:41:29

 スマホの画面に映し出された通知。

『ミラ・ルミナの配信が始まりました』

 俺の指が震える。

 すでに死んだはずの彼女が、また何かを伝えようとしているのか?

 瑠璃と並んで、俺は配信を開いた。

 黒い背景の中、ミラ・ルミナのアバターが静かに浮かんでいる。

 しかし、昨日とは違い、彼女は笑っていなかった。

「……お願い。誰か、気づいて」

 その声はかすれていた。

「私は、まだここにいるの……」

 俺の背筋が凍った。

「これ、昨日とは違う録画か?」

「……わからない。でも、何かが変わってる」

 俺はコメント欄をスクロールする。


 《これって幽霊配信?》

 《もしかして運営が仕掛けた企画?》

 《やめろよ……本当に怖いって……》


 視聴者たちも混乱していた。

 しかし、俺の目は、画面に映る“ある文字”に釘付けになった。

 『RECORD 07:41:29』

「これ……ライブじゃない」

「録画?」

 俺は息を呑んだ。

 だが、それはただの録画ではなかった。

 7時間41分29秒——つまり、これは“彼女が死ぬ直前”に録画されたものなのだ。


 「瑠璃、音量を上げてくれ」

 瑠璃がスライダーを上げると、ミラ・ルミナの声がクリアに聞こえる。

 「……私、誰かに狙われてる」

 その瞬間、俺の心臓が跳ねた。

 「お願い……もし私がいなくなったら、この配信を見て」

 「この配信?」

 「私が消えた理由が、ここにある」

 彼女のアバターは、一瞬だけ表情を曇らせる。

 「——誰か、助けて」

 その言葉の後、映像が途切れた。

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