第10章 新しい道を歩むとき③

10.5「新しい可能性」

10.5.1 スクールカウンセラーの提案

 真奈は、ある日届いた一通のメールを見て驚いた。それは、地元の小中学校からの提案で、スクールカウンセラーとして働かないかという内容だった。相手は学校の教育委員会で、彼女が地域で子どもや親のメンタルケアに対する深い関心を持っていることを知り、ぜひその力を学校に生かしてほしいというものだった。

最初は半信半疑だった真奈も、メールを読み進めるうちに心が惹かれていった。彼女は結衣や穂香の育児を通して、子どもたちのメンタルケアの重要性を強く実感していた。それだけでなく、親たちが抱えるストレスや悩みにも触れることができ、専門的な支援が必要だと感じる場面も多かった。学校という環境の中で、子どもたちの心のケアがどれほど大切か、以前から思っていたことを再確認する機会でもあった。

しかし、提案を受け入れる決断をするには、真奈の心には大きな壁があった。それは、自分の今まで積み上げてきた臨床心理士としてのキャリアを一度捨てることになるという恐れだった。これまで、患者との信頼関係を築き、厳しいケースにも真摯に向き合ってきた真奈にとって、転職の選択肢は簡単なものではなかった。慣れ親しんだ環境を離れ、新たな分野での挑戦をすることへの不安が、心の中に重くのしかかっていた。

「これで本当に良いのか?」という思いが、日々の仕事の中で湧き上がってくる。彼女は、自分が今まで感じていた仕事のやりがいや、時にはそのギャップにも悩まされていた。心理支援が必要な現場での仕事の大切さを感じながらも、現実の壁にぶつかり続ける日々。そんな中で、スクールカウンセラーとして働く提案は、どこか新しい希望の光のように見えた。しかし、それが本当に自分にとって正しい選択なのか、その答えはすぐには見つからなかった。


10.5.2 内心の葛藤と颯真の支え

 真奈は、スクールカウンセラーとして働く提案を受けてから、毎日のように自分の気持ちと向き合っていた。これまでのキャリアを捨て、新しい道に進むという決断は、ただの転職ではなく、自分の人生を大きく変える一歩になる。最初はその選択が怖くて、どんなに考えても結論が出なかった。

ある晩、颯真が仕事から帰ると、真奈はリビングでぼんやりと考え込んでいた。颯真がソファに座ると、真奈はようやく口を開いた。「ねぇ、颯真。スクールカウンセラーの提案が来たんだけど…どうしたらいいと思う?」

颯真は少し考えてから、優しく言った。「もし、本当にやりたいと思えるなら、一歩踏み出してもいいんじゃないか? 迷っているうちは、結局答えは出ないよ。」彼は真奈の目を見て、温かく微笑んだ。「僕が支えるから、怖がらなくていいよ。」

颯真の言葉は、真奈の心に安心感を与えた。彼はいつも、真奈が自分の道を歩むために背中を押してくれる。けれど、真奈の心の中には依然として葛藤が残っていた。子どもたちの成長を見守りながら、仕事と家庭のバランスを取ることが大切だと考えていた一方で、自分が本当に望んでいる道を見つけることができていないような気がしていた。

真奈は翌日、彩乃にも相談することにした。彩乃とはいつもお互いに気軽に話せる関係で、彼女に話すことで、自分の思いを整理できるかもしれないと思った。

「彩乃、実はね…」と、真奈は電話越しに話し始めた。「スクールカウンセラーの仕事の提案が来たんだけど、今の仕事を辞めて転職するかどうか、すごく迷ってるんだ。」彩乃は少し静かに聞いていたが、やがて真奈に言った。「それが本当にやりたいことで、今の仕事にやりがいを感じられないなら、一度踏み出してみるのもいいんじゃない?」

彩乃の言葉に、真奈は少し気が楽になった。彼女もまた、何度も自分の道を模索してきたからこそ、アドバイスにも説得力があった。そして、真奈はその時初めて、自分が本当に望んでいる道を模索し始めていることに気づいた。家庭と仕事のバランスを大切にしながら、自分の成長を感じられるような新しい仕事に挑戦したいという思いが芽生えてきた。

「でも、まだ迷っている部分があるんだ。今まで積み上げてきたものを捨てるのは怖いし、子どもたちと過ごす時間も大事だから…」と、真奈は呟いた。

颯真はまた、彼女を支えてくれるだろう。決断は時間がかかるかもしれないが、真奈は少しずつ、自分が進むべき道を見つけていく準備ができてきたように感じた。


10.5.3 未来への決断

 真奈は、スクールカウンセラーとしての道に対する考えを整理し、具体的な計画を立て始めた。転職を決意したわけではなく、まずは必要な資格を取得し、実際にその分野で働くための準備を始めることを決めた。自分にとって、子どもたちの心のケアをすることが、ただの仕事ではなく、人生をかけて向き合うべき使命だと感じ始めていた。

「この道を進むことで、もっと多くの人に寄り添えるんじゃないか。」真奈は、自分の考えがだんだんと明確になっていくのを感じた。臨床心理士としての経験を活かし、子どもたちや親たちの問題に向き合うことができれば、より大きな影響を与えることができる。それが自分の新しい使命だと確信を持ち始めた。

颯真と彩乃に何度も相談した結果、真奈はやっと自分の進むべき方向性を見つけ出した。これまでのキャリアに対する不安や葛藤もあったが、今はそのすべてが、自分を成長させるためのステップだったと感じていた。新しい環境で、自分が本当にやりたかったことを実現するための第一歩を踏み出す覚悟を決めた。

「これが私の新しい挑戦だ。」真奈は静かにそう思った。彼女の決意は固まり、次のステップに進むための準備が整ってきた。転職するための手続きや資格取得のために、少しずつ行動を起こしていく日々が始まった。スクールカウンセラーとして新たな挑戦をする決意を固めた真奈は、自分にとって大切な未来を切り開くことを決意したのだった。


10.6.1 迅の視点 — 新たなやりがい

 コートの端で笛を吹くと、ジュニア選手たちが一斉に動きを止めた。迅はゆっくりと歩きながら、目の前の選手たちを見渡す。彼らの表情には疲労とともに、成長への意欲が宿っていた。

「今のプレー、悪くなかった。でも、もっとシンプルに考えていいんじゃないか?」

 そう言って、一人の選手の肩に手を置く。少年は悔しそうに唇を噛んでいたが、すぐに小さくうなずいた。迅は彼らのプレーを見守る中で、自分がすべきことが明確になってきたのを感じていた。

 選手としての道を退いたとき、一瞬でもバスケットから離れることを考えた。だが、こうして若い世代の選手たちと向き合うことで、今までとは違う形でこの競技と関わり続ける意味を見出している。

 試合での勝利を目指すだけではない。彼らが自分自身と向き合い、成長していく過程を支えること。勝ち負け以上に、その過程にこそ価値があると、今ならはっきり言える。

「よし、もう一回やってみよう!」

 迅が声をかけると、選手たちは頷き、再びコートに散った。彼らの背中を見送りながら、迅は確信する。指導者としての道は、まだ始まったばかりだが、間違いなく自分が進むべき場所なのだと。


10.6.2 作家としての活動の広がり

 講演会が終わり、控室に戻ると、一気に緊張が解けた。

「宮原さん、お疲れさまでした!」

 スタッフが笑顔でペットボトルを差し出してくれる。私は「ありがとうございます」と微笑みながら、少し乾いた喉を潤した。

 会場には、思った以上に多くの人が足を運んでくれていた。育児に悩む母親たち、教育関係者、学生――それぞれの立場から私の話に耳を傾け、質疑応答では多くの手が挙がった。

「育児と仕事のバランスはどうしていますか?」

「書くことを続けるために、一番大切にしていることは?」

 どの質問も、かつての私自身が悩み、模索してきたものばかりだった。

「正直に言うと、いまだに手探りなんです」

 そう答えると、会場から笑いが起こった。私の言葉に共感したのか、誰かが大きく頷いているのが見えた。

 講演の最後、私はこんな言葉で締めくくった。

「母になっても、私は私でありたいと思っています。そして、母になったからこそ、見える世界があるとも思うんです。皆さんも、それぞれの物語を大切にしてください」

 会場から大きな拍手が湧き起こったとき、私は確かに感じた。私の言葉が、誰かの心に届いたのだと。

***

 帰宅すると、リビングで智輝が迅の背中によじ登って遊んでいた。

「あ、ママ!」

 私の姿を見るなり、智輝が駆け寄ってくる。抱き上げると、彼の小さな手が私の頬を触った。

「おかえり、彩乃」

 迅がソファに座ったまま、優しく笑う。

「ただいま。智輝、今日はいい子にしてた?」

「うん! パパと遊んだ!」

 私の顔を覗き込むようにして、智輝が嬉しそうに笑う。

 この温かい時間を守りながら、私は「作家」としての活動を続けている。育児エッセイを書き始めた当初は、こんなに広がるとは思っていなかった。

 書店で平積みにされ、新聞や雑誌で特集が組まれる。講演会の依頼も増え、テレビの情報番組にも呼ばれるようになった。街を歩けば、「宮原彩乃さんですよね?」と声をかけられることもある。

 作家として、自分の言葉が世の中に届くことは嬉しい。だが、その一方で、心の奥に引っかかるものもあった。

 ――私は「育児本の人」なのだろうか?

 もちろん、母としての経験を綴ることに誇りを持っている。けれど、私はそれだけを書きたくて作家になったわけではない。

 書きたいことは、まだたくさんある。

 小説の構想も、エッセイとは違うテーマで綴りたいこともある。けれど、世間は今の私を「育児エッセイ作家」として見ている。

 このまま進むべきなのか。それとも、新しい一歩を踏み出すべきなのか。

「ママ?」

 智輝が私の顔をじっと見つめている。気づけば、考え込んでしまっていた。

「ん? どうしたの?」

「なんか、むずかしい顔してる」

 ふっと笑って、彼の髪を撫でる。

「ううん、大丈夫。ちょっと考えごと」

 今はまだ、はっきりとした答えは見えない。でも、書くことをやめるつもりはない。

 私はこれからも、書き続ける。

 母として、そして、一人の作家として。


10.6.3 生き方を模索する

 日差しが少しずつ暖かくなり始めた午後、咲希は公園のベンチに座っていた。目の前には、小さな子どもを連れた母親たちが楽しそうに会話を交わし、学生らしきグループが芝生に座り込んで談笑している。

 ──みんな、それぞれの時間を生きてるんだな。

 ふと、そんなことを思う。

 事故に遭ってから、自分の人生について深く考えることが増えた。以前の自分は、仕事に没頭し、与えられた目標を達成することばかり考えていた。でも、あの出来事をきっかけに、自分の生き方を見つめ直すようになった。

 彩乃や真奈の話を聞いて、改めて気づいたことがある。二人とも、自分の道をしっかり歩いている。彩乃はライターとしての仕事を続けながら、家族との時間も大切にしているし、真奈はカウンセラーとして新しいプロジェクトに取り組みながら、家庭を築いている。

 それに比べて、私は──。

 咲希はスマートフォンを取り出し、メモアプリを開いた。そこには、自分が興味を持った仕事や資格、これから挑戦してみたいことがリストアップされている。

 「旅行企画」

 「観光業界でのキャリアチェンジ」

 「教育旅行に関わる仕事」

 「人の人生に寄り添う仕事」

 どれも、自分の心の中に少しずつ芽生えた思いだった。

 ──私にできることは何だろう?

 考えれば考えるほど、答えは簡単には出てこない。けれど、少し前までの自分とは違う。以前は、「このままでいいのかな」と思いながらも、変わることを怖がっていた。でも今は、わからないなりに、前に進んでみたいと思っている。

 「……よし。」

 咲希は小さく息を吸い込み、スマートフォンのメモに新しい一行を加えた。

 「まずは、異動希望を出してみる。」

 それがどんな結果になるかはわからない。もしかしたら、今の会社では難しいかもしれない。でも、だからといって、何もしなければ何も変わらない。

 ──人生は、一度きりなんだから。

 そう思ったとき、少しだけ心が軽くなった気がした。

 目の前では、子どもたちが無邪気に走り回っている。咲希はそんな光景を眺めながら、自分の新しい一歩を踏み出す決意を固めた。


10.6.4 新しい挑戦への決意

 冬の寒さが少しずつ和らぎ、春の訪れを感じる季節。駅のホームに立つと、朝の澄んだ空気の中で電車が滑り込んでくる音が響いた。

 仕事に復帰してから数ヶ月が経った。最初はペースを掴むのに必死だったが、今では職場と家庭のリズムにも慣れ、毎日が流れるように過ぎていく。ただ、その「流れ」に自分が乗っているだけのような感覚が、時折胸を締め付けた。

 ——このままでいいのか。

 電車の窓に映る自分の顔を見ながら、その問いがまた浮かぶ。かつて、自分は確かに「人の心に寄り添う仕事がしたい」と思ってこの道を選んだ。スクールカウンセラーという仕事は、子どもたちの成長に関わり、彼らが抱える悩みや苦しみに向き合うことができる、やりがいのある仕事だったはずだ。

 それなのに——今の自分はどうだろう?

 忙しさの中で、日々の業務をこなしながら、いつの間にか「できること」と「やりたいこと」の間に溝ができていた。母として、カウンセラーとして、自分がどうありたいのか。その答えを探すうちに、ある考えが頭をよぎった。

 (もっと子どもたちや親たちに寄り添える形で、今の仕事を広げられないだろうか)

 例えば、学校という枠にとらわれず、地域や家庭を巻き込んだ支援の形は作れないだろうか。スクールカウンセラーの役割が、学校の中だけで完結するものではなく、もっと広い形で子どもたちやその家族の支えになれたら——。

 「橘さん、大丈夫?」

 職場に着いてから、同僚の石田さんに声をかけられた。自分がぼんやりしていたことに気づき、苦笑する。

 「うん、大丈夫。でも、ちょっと考えてた」

 「何を?」

 「……私、このままでいいのかなって」

 石田さんは少し驚いた表情をしたが、すぐに落ち着いた声で言った。

 「何かやりたいことがあるの?」

 「まだ漠然としてるんだけどね。スクールカウンセラーとしての役割を、もっと広げられないかって考えてて。学校だけじゃなくて、家庭や地域とのつながりを強めるような取り組みができたら、もっと子どもたちを支えられるんじゃないかって……」

 言葉にしながら、自分の中に確かな思いが芽生えているのを感じた。

 「それ、すごくいい考えじゃない?」

 石田さんはそう言って微笑む。

 「でも、簡単なことじゃないよね。仕事と家庭のバランスもあるし……」

 「そりゃあ、簡単じゃないよ。でも、橘さんならできると思うよ」

 その言葉が、心にすっと染み込んでいった。

 ——「できる」と思ってくれる人がいる。

 それなら、私ももう一度、自分を信じてみよう。

 帰宅してから、颯真にその考えを打ち明けると、彼は驚いた顔をした後、真剣な表情で頷いた。

 「いいと思う。きっと大変だろうけど、真奈がやりたいことなら、俺もできる限り支えるよ」

 その言葉に、心が温かくなる。子どもたちの寝顔を見ながら、そっと手を握る。

 「今しかない」

 そう思った。今、この瞬間に踏み出さなければ、きっとまた同じように迷い続けてしまう。

 深呼吸をして、手帳を開く。まずは、できることから始めよう。未来に向かって、小さな一歩を踏み出す決意を胸に——。


10.6.5 それぞれの歩み

 春の訪れを告げる風が、街のあちこちで新たな始まりを運んでいた。

 それぞれの人生が、静かに、しかし確かに、新しい局面へと進んでいく。

***

 迅はコートの中央に立ち、ジュニア選手たちを見渡していた。試合形式の練習が終わり、選手たちは額に汗を滲ませながらも充実した表情を浮かべている。

「いいプレーだった。でも、もっとシンプルに!」

 そう声をかけると、少年たちは真剣な眼差しで迅を見つめた。彼らが成長していく過程に関われること。それが今の彼にとって、何よりのやりがいだった。

 選手としてのキャリアを終えたとき、自分の居場所を見失いかけたこともあった。だが、今は違う。バスケットボールを通して、次の世代へ何かを伝えられる。

 それは、選手だった頃とは違う形での“戦い”だった。

(俺もまだ、成長できる)

 ふと、そんな確信が胸に湧く。選手としてではなく、指導者としての道を極めていく。それが今の自分の進むべき道なのだと、迅は静かに思った。

***

 彩乃は自室のデスクで、書きかけの原稿を前に考え込んでいた。

 ――私は「育児エッセイの人」なのだろうか?

 確かに、母としての経験を書いた本は多くの人に届いた。そして、それによって救われたと言ってくれる人もいる。けれど、それだけでいいのかという迷いが、心のどこかにあった。

(書きたいことは、まだたくさんある)

 机の上には、構想中の小説のメモが広がっていた。育児エッセイとは異なる、もっと自分自身の表現としての物語。

 智輝の寝顔を思い浮かべる。母としての時間と作家としての時間、そのどちらも自分にとって欠かせないものだ。ならば、両方を大切にしながら進んでいけばいい。

「私は、書き続ける」

 そう呟くと、彩乃は迷いを振り払うようにキーボードに手を置いた。

***

 咲希は、新しい職場のデスクに座っていた。

 これまでの仕事を辞め、観光業界へ転職して数週間。まだ慣れないことも多いが、それでも、この選択は間違っていなかったと感じていた。

「これからの企画なんですけど」

 同僚が差し出した資料には、地域と連携した新しい旅行プランが書かれていた。人と人とを繋ぐ仕事。単なる観光ではなく、旅を通じて誰かの人生に寄り添うこと。

 かつての自分なら、「安定」を理由にこの道を選ばなかったかもしれない。でも、今は違う。事故を経験し、命の儚さを知ったことで、彼女はようやく「今を生きる」ことを選んだのだ。

「面白そうですね。ぜひ、やりましょう」

 そう答えながら、咲希は少しだけ空を見上げた。新しい人生は、まだ始まったばかりだ。

***

 真奈は、オフィスの窓から外を眺めていた。

 スクールカウンセラーとしての仕事を続けながら、彼女は新たな取り組みに向けて動き出していた。学校という枠を超えて、子どもたちや家庭を支える仕組みを作ること。

「これ、本当にやるんですね」

 同僚が苦笑しながら言う。彼女が提案した新しい支援プログラムは、まだ試験段階だったが、確実に前に進み始めていた。

「うん。やるしかないから」

 そう微笑むと、真奈はそっと手を握りしめた。家庭と仕事の両立は、決して楽なものではない。それでも、自分が選んだ道だ。

 彩乃と交わした言葉が頭をよぎる。

 ――私たちは、何度だって前に進める。

 ふと、スマートフォンを開くと、彩乃からのメッセージが届いていた。

「今度の日曜日、会わない?」

 その一文に、真奈は自然と笑みをこぼす。

「……そうだね、会いたいな」

 春の風が、窓の外でそっと揺れた。

***

 それぞれが、それぞれの人生を歩いていく。

 新たな挑戦、決意、迷い、そして希望。

 けれど、そのすべての瞬間において、彼らは共にあった。

 そしてこれからも、きっと――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る