第37話

……またか。



内心げっそりする俺の前で、透は涙目で言う。




「怜じゃないと嫌なのに、怜は俺が嫌いだからカットしてくれないのか……?」




黒髪の美形が、宝石のようにキラキラ輝く涙を一滴、ぽろりと溢す。


絵になる美しさだ。本当にコイツは恐ろしい。




だが俺はコイツの涙を見慣れている。


我が儘が通らない時、透はいつもこうしてうそ泣きをするんだ。


それに騙されているのは、優しい悟と単純な伊月だけ。


望には、透も効かないとわかりきっているからかそもそも泣いたりしない。




俺?……俺はうそ泣きだって分かってるけど、ドン引きして我が儘を聞くと分かっているから、泣いている。

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