第34話

「怜のケチ!前髪ぐらいいいじゃん!」


「ふざけんな、前髪が一番難しいんだよ!面倒くさい!」


「金なら出す!」


「金の問題じゃない!とにかくしない!」


「綾乃の髪は切ったくせに……」


「あれはお前らがぎゃーぎゃーうるさいから仕方なくだ!!」




パジャマ姿の俺と透が言い合いをする。


だが俺は絶対に折れない、折ったりしない。






……大体、俺が髪に興味を持ったのは、自分の銀髪と他人の黒髪……があまりにも違いすぎて驚いたことがきっかけだ。




特に透の黒髪。艶やかで、細くて、柔らかで……色が違うだけ、とかそういう話じゃなかった。



魅了された。小さかった俺は、初めて見たこの綺麗な黒髪に釘付けになった。

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