第11話

え、テーマはなにかって?



……そうだな。この小説のテーマは……




「……出口のない地獄」




生きていても地獄。死んでも、その骸は無惨で残酷な事をされて地獄。


自分で自分を殺めた罪深き魂も、地獄へ送られる。




救いようのないホラー。


絶望しか存在しない小説。


笑顔になんてなれない、恐怖。





現実味のある自殺に、少しフィクション交えた骸の末路、そして完全なるフィクションの、魂の終着点。



書くのが楽しそうだ。これを、書いてみよう。




ふと浮かんだストーリー。


僕は背筋を伸ばすと、パソコンのスクリーンセーバを解除し、ワードを立ち上げた。


ブラインドタッチで、まず構想を練る。


プロット、主人公、設定、名前、時系列の整理、そしてプロローグを書いてみて、そして何度も書き直していく。




僕が一番力を入れるのは、プロローグだ。


まず最初の数ページで、読者の心を掴むために。



最初からつまらなかったら、きっとその先を読もうと思ってくれないと思うから。



キーボードの上を、指が踊るように忙しく動く。


キーを叩く音が小気味良く、たったそれだけに充実感を覚えた。



文字を打つ度に、僕の世界が確定していく。表現されていく。形になっていく。


それが好きで、それが楽しくて、僕は物語を考え、書くことが好きになったんだ。



打っている間は、この作品が売れるとか売れないとか、そういう鬱な問題を忘れることが出来た。


そして時間を忘れるほど、水や食べ物も頭の中から消えてしまうほど集中して仕事していた僕を現実に戻らせたのは、訪れた担当の存在だった。



「やぁ~すごい雨だったよ!お陰で服が濡れちゃった!ちょっとハンガー借りるよ……って、え?!なになに、凄いじゃん!かなり集中してるね!やっと新作浮かんだんだ?!」

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