第10話

自分の思考に笑いながら、僕は涙を流した。


あまりにも自分の存在がちっぽけで、影響力がなくて、惨めで、泣いた。




作家になった日は、あんなにも輝いていたのに。


その夢を追いかけていた日々も、充実して幸せなものだったのに。



だけど夢のその先は、こんなにも孤独だ。





嗚呼、僕ってなんなのかな。


なんで書いているのかな。なんで創作が好きなのかな。


こんなに悩むこと、今まであったかな。



親に反発して、友達の応援に押され、クラスメイトの「どうせ叶わないよ」と言いたげな視線にも耐えて、ここまで来たのに。




売れない。売れない作家。売れない作品。売れない、僕。



悲しくて涙が止まらず、悔しく喉の奥が火傷しそうな程痛くなった。




……死にたい。死んで楽になりたい。



僕の頭は、現実逃避の一歩を辿るかのように、そんな事をぼんやりと願った。




死んだら、きっとそこには何もないんだろうな。


僕の心臓が動きを止めれば、いつかこの体は腐り、異臭を放つだろう。


何も見ていない僕の目玉にはなにが映り、そしてその姿を見た人はどんな表情を浮かべるのだろう。

 



僕という名の骸は、他人から見たら不気味なのかな。恐怖を与えるのかな。


恐怖を与える物語を書いて、見事失敗した僕は、この体で恐怖を伝えることが出来るのかな。





僕の骸が、僕のホラー。


文章じゃ伝えきれなかった恐怖を、表現してくれる僕の死体。






そこまで考えて僕は小さな苦笑を浮かべた。






……いいね。そういうの。





骸が主人公のホラー小説。斬新で、良くないかい?




自殺した骸が、地獄だった自分の人生を思い返し、読者に語る小説。


結局本当の恐怖は、空想じゃなくて今生きている現実だってことを、生々しく書いて。


それで骸が自分が自殺した経緯を話し終えた後、その死体を見つけた馬鹿な人物が、自分が疑われるのではないかと思い、主人公の骸をグロテスクな方法で隠すっていう、ね。

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