第6話

賞を取った時は、今で思えば運が良かっただけかもしれない。



現に僕の小説は売れていなし、気紛れで覗いた某オンラインショップのレビューを見ると、星は少なくレビューも一件のみ。しかも、その内容は辛辣。



中古本を売っている本屋を覗けば、僕の本がありえない安さで売ってあった。


悲しくなった。僕の本を買ってくれた人間は、読み返す気もなくて安い値段で僕の本を売ったんだ。



時間をかけ、楽しみ、力を注いで作った僕の作品が、今はコイン一枚で買えてしまう。




現実は、厳しく辛く。


アルバイトで働いている、所謂フリーターで働いている人達の方が、よっぽど輝いて見えた。


ずっと家に閉じ籠って太陽の光をあまり浴びない僕の肌は、病人のように白く、不気味で。


夜、人気のない場所で僕が現れたら、見た人は幽霊だと騒ぐんじゃないか、と思った。





なんで、僕は小説家になったんだろう。


もう、辞めたほうがいいんじゃないか。




そう思うが、小説に全てを注ぎ込んだ僕に、文章を書く意外の能なんて存在せず。


実家に帰ろうにも、でかい口を叩いて出てしまった為、売れないから!と帰るのも、小さなプライドが許さない。





薄暗い狭い自室で、パソコンを前に椅子の上で体育座りをする僕。


その瞳から自然に浮かんで溢れる涙。





僕の世界は、綴る物語はつまらない。


面白いと思える作品は、なんなんだろう。


なんで僕はそれが書けないのだろう。





読者の君に問う。


面白い作品、お金を出して買いたいと思う作品、売りに出さず何度も読み返したくなる作品って、なんだ?




僕は、自分が面白いと思う作品を書いて売れなかった。


面白い作品が、分からなくなってきたんだ。

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