第5話

何故なら、こっちは書けなくなったら稼げない、お金がない、ご飯が食べれない、生活できない!


君たちが「スランプだぁああ」 と叫んだところで、ちゃんと生活出きるだろう。



趣味と仕事じゃそれだけの差が出る。


さあ、これで今の僕の状況がどれだけ絶望的か君にも理解できただろう。



ただでさえ売れない僕がこの上スランプに陥って書けなかったら、それこそ餓死してしまう。レストランで言えば、料理も出せない状態。潰れてしまう。




僕は胃痛を覚えながら深い溜め息を溢す。


新作……売れる物語……あぁあああ、もう最悪だ。




最近愛用している胃痛薬をペットボトルの水と共に胃へ流し込み、長い長い吐息を溢す。


眼鏡を外した瞳。視力と引き換えにしても、何億もの文字を打ち続け。その代償に裸眼の世界は酷く滲んでいる。


歪んで、朧気な世界を見つめ、僕はまた溜め息をつく。




空腹は、覚えない。覚えたところで、冷蔵庫にろくな食い物はない。


小説家になって、印税で稼いで。それで、一生食っていけるって思ってた。




だが、現実は苦瓜よりも苦く、そしてただひたすらに厳しかった。




昔から、物語を考えるのが好きだった。


小学校、低学年の時から友達を喜ばせるために、即興で作った怖い話を語っては、遊んだ。



怖い映画を観れば興奮したし、本だって読みふけった。



中学校の七不思議だって、文芸部員だった僕が部誌に載せたやつが、そのまま七不思議になったんだ。


文才、文章力、構成力。僕は、優れていた。



井の中の蛙大海を知らず。まさに僕のことだった。



子供の活字離れが深刻化している中、本よりもっと面白いことが増えた現在で、ライバルが圧倒的に少ない僕は、自分は天才だと思い込んでいた。

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