第2話 支配とは何か
フィオラとカイルは剣を置いた戦場を離れ、荒野を歩いていた。乾いた風が二人の頬を撫で、遠くにはかすかな鳥の声が響いている。それは久しく聞いていなかった静かな音だった。
「ねえ、カイル。」
フィオラがふと立ち止まり、カイルの方を振り返った。その瞳には複雑な感情が宿っている。
「支配って、一体なんだと思う?」
カイルは立ち止まり、しばらく空を見上げた。沈黙の中、風が二人の間を吹き抜ける。やがて、彼は低い声で答えた。
「支配か…。それは力を持つことだと思っていた。だが、力だけでは人は動かない。恐怖を伴えば動かすことはできても…それは、ただ従わせるだけだ。」
「従わせるだけ…か。」フィオラは静かに呟く。その言葉の重みを確かめるように。
二人は再び歩き出した。次第に草原が広がり、荒野とは違う生命の気配が漂ってきた。フィオラが小さな草花を見つめながら口を開く。
「でも、秩序がなければ世界は乱れる。私たちが支配を捨てるなら、何を持って秩序を保つの?」
カイルは歩みを止め、足元の小石を拾い上げた。小石を手の中で転がしながら、彼は思索を巡らせるように言葉を選ぶ。
「恐怖による支配ではなく、協力による秩序を考えなければならないんだと思う。人は恐怖ではなく、理解と信頼によって本当に動く。」
フィオラはその言葉を聞いてうなずいた。しかし、どこか納得しきれない表情が浮かぶ。
「でも、カイル。それは理想論じゃない?人は皆、自分の利益を優先する。そんな中で本当に協力なんて可能なの?」
カイルはフィオラの顔をじっと見つめた。その目には確固たる意志が宿っている。
「可能かどうかはわからない。でも、それを目指さなければ、結局また同じことを繰り返すだけだ。争いと破壊の連鎖を断つには、まず自分たちが変わらなければならない。」
フィオラは一瞬言葉を失ったが、やがて微笑んだ。
「あなたのそういうところ、昔から変わらないわね。理想ばかり語って、現実には不器用なところが。」
カイルも笑みを返す。
「不器用でもいい。少なくとも、その理想に向かって歩き出すことが、今の俺たちにできる第一歩だ。」
二人は再び歩き始めた。太陽が草原の向こうに沈みかけ、空は赤から紫へと色を変えていく。その景色を見ながら、フィオラが小さな声で言った。
「支配じゃない秩序か…。それを作るために、まずは何をすればいいのかしら。」
「まずは星を作るんだ。」カイルがきっぱりと言った。
フィオラは驚きながらも興味深そうに彼を見つめた。
「星を作る…それはどういう意味?」
「この荒れ果てた世界に新しい希望を宿す象徴としての星だ。それが実際にどういう形になるのかは、これから考えよう。でも、俺たちが剣を置いた意味を込めるものにする。」
「星か…。面白いわね。それなら私も手伝うわ。」
こうして二人は、新しい世界を作るための第一歩として、「星を作る」計画を立て始めることとなった。その星には、支配ではなく協力の象徴を込めることを誓いながら。
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