星創る神話
@ashika1124
第1話 剣を置く決意
荒涼とした大地に沈む夕陽が、赤く染まった空を照らしている。戦場は静まり返り、かつての叫びや剣の響きは遠い記憶のようだった。フィオラとカイルは互いに向き合いながら、手にしていた剣をゆっくりと地面に置いた。
剣が土に触れる音が響いた。長い戦いの終わりを告げる音だった。
「こんなに奪い合って…私たちは何を得たの?」
フィオラが静かに口を開く。その声は冷たくも温かくもなく、ただ真実を求める響きを持っていた。
カイルは目を伏せ、手のひらを見つめながら応じた。
「勝者などいない。ただ…多くのものを壊し、多くの傷をつけた。そして…理解も少しだけ得た。」
二人はしばらく無言で立ち尽くした。かつて剣を交えた戦いの記憶が、頭の中に次々と浮かんでくる。
フィオラが見上げた空には星が瞬き始めていた。その光景に、彼女はふと気づきを覚える。
「カイル…戦いを終えた私たちに、次は何ができると思う?」
フィオラの問いに、カイルは少しだけ笑みを浮かべた。それは苦いながらも、どこか希望を含んだ笑みだった。
「支配というものが何か…本当の意味で知ること。そして、もしそれを使うのなら、恐怖や争いじゃなく、秩序を生むために使うことだ。」
「秩序を生む…」フィオラはその言葉を繰り返し、噛みしめるように呟いた。
二人は同時に剣を地面に残し、その場を離れた。かつて支配の象徴だったその剣は、もう過去のものとなった。
「では、歩き出しましょう。剣ではなく、手を使って。」フィオラが静かに微笑む。
「ああ、新しい何かを作るために。」カイルが応じ、互いにうなずく。
戦いの終わりは、新しい物語の始まりだった。二人の足元には、やがて新たな星々が芽吹くような兆しが広がり始めていた。
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