第11話
仕事も慣れて、安定した生活を送り始めた時、僕は君にプロポーズをした。
ダイヤの指輪を君にあげて、「結婚してください!」という、ベタなプロポーズを。
君は頬を染めて、嬉しそうに微笑んだ。
でも、指輪は受け取ろうとしなかった。
『ごめんね……私、あんたと結婚出来ない』
『えっ……』
『結婚しちゃったら、もう簡単に別れること出来なくなるじゃん?嫌いになっても、嫌になっても、離れるのに手続きとか色々しなきゃいけなくなるじゃん?そういうの、嫌なの』
『……つまり、僕と結婚してもいつか別れるから、したくないってこと?』
『ううん、違う……結婚して、簡単に離れられない関係になるのが嫌。恋人のまま一緒にいて、簡単に切れる関係を続けて、それでも別れない……簡単に離れる事が出来るのに離れない……そういう関係がいいの』
彼女の言っている意味が、まだ少し分からなかった。
ただ、彼女は頑なに結婚を拒否した。
絶対に、頷いてはくれなかった。
『いつでも別れられる関係でいて、それでも別れずずっと一緒にいることが出来たら、それが本当の愛じゃない?』
君はダイヤの指輪を返して、輝くような笑みでそう言った。
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