第3話

私はスマホを閉じ、じっとレストランの入り口を見つめた。


そして十分後、見慣れた男女が入店してきた。





可愛いチェックのワンピースに身を包んだ千枝。


そしてそんな彼女の肩を抱いている、ラフな格好の晃。




二人は私に気付かないまま、窓際の席に着いた。





分かってた。


二人がこのお店に来ることを。




だって、晃はこのデパートに来たらいつもこのファミレスで食事を取っていたから。


私とのデートの時も、毎回ここで食べていたから。





私に見つめられているとは知らず、二人は楽しそうに食事を始める。


千枝の白い頬は林檎色に染まっていて、とても愛らしかった。


そんな彼女を、吟味するかのように見ている晃。





……そうだ。


私との初デートの時も、そんな目をしていた。




だとしたら、きっとこの後は……




二人は食事を終え、立ち上がる。


私も同じように席を離れると、二人の後をつけた。




バレないように、でも見失わないように、慎重に尾行する。


二人はデパートで少しショッピングをした後、外に出た。




ちょっと歩いて二人は、いや晃は千枝の手を握ってとある場所へ引っ張る。


嫌な予感とデジャヴを覚えながら、私は隠れながら二人の後に続いた。




そして、辿り着いたのは一軒のラブホテル。


千枝は顔を真っ赤にして少し渋ったが、晃が軽くキスをして何か囁くと、ゆっくりと一緒に中に入ってしまった。






……ああ、やっぱり。


私と、同じ……


晃との初デートで、初体験をした、私と……







私はラブホテルの前に立ち、建物を見上げた。






今夜、千枝は晃に抱かれる。





あの唇と舌と指で愛撫され、啼かされ、女としての快楽を刻まれる。

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