第2話

歪んだ愛の結末は、きっと、誰かのハッピーエンド。














『────でね、今からデートしにいくの』


「そう……」


『すっごく緊張する!』


「そんなに?普通にデパートで買い物するだけでしょ?」


『そうだけど……初めてだし……』


「……千枝(チエ)なら大丈夫だよ。晃(アキラ)君と楽しんでね」


『……頑張る。ありがとう、紅葉(モミジ)』







プツッ、ツーツーツー……




切れた通話。


耳に響く煩い音を消して、私は無表情でスマホの画面を見つめた。






ガヤガヤと煩いファミレス。


夕食の時間だからか、お客さんが多くてとても忙しそう。


私は、そんなファミレスの一番隅っこ、観葉植物で上手く陰になった席に座っていた。





たった今通話をし終えた相手は、親友の千枝。


黒髪ボブの、無邪気で純粋な女の子だ。




その彼女が今日、初彼と初デートをするらしい。


ずっと前から好きで、先週告白して付き合えることになったとか。



千枝は泣くほど喜んでいて、この世で一番の幸せ者、と表現したくなるぐらいの笑顔を浮かべていた。


その隣で、薄っぺらい作り笑いをしている私に気付かないぐらいに、輝いていた。




千枝と付き合うことになったのは、隣のクラスの晃。


明るい茶髪に、人懐っこい笑みが人気の男の子。





……そして私の彼氏だった人。




正確に言えば、千枝が告白したせいで、元カレになってしまった人。





そう、私と晃は付き合っていた。


でも晃は人気だったから、隠れて付き合っていた。




なのに、千枝が告白した時、晃は呆気なく頷いてオッケーを出したらしい。




そして私は捨てられた。


晃は、千枝に乗り換えた。





なのに千枝はそれを知らず、こうして嬉しそうに逐一報告してくる。





無知は罪。



純粋だろうが無垢だろうが、千枝が私から晃を奪った時点で、私の彼女への友情は、消え去っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る