第10話 真実の代償
塔が崩れ去る轟音が、二人の耳をつんざいた。崩壊の中で、本を抱えたカイルとフィオラは出口を目指して走り続けた。周囲の壁がひび割れ、瓦礫が容赦なく降り注ぐ中、二人の心は緊張と疑念で満たされていた。
「これが真実だなんて……信じられるの?」フィオラが叫ぶように言った。
「信じるしかないだろ!」カイルは前を向いたまま答えた。その声には焦燥と、それでも消えない決意が込められていた。
彼らは最後の階段を駆け上がり、塔の外に飛び出した。振り返ると、巨大な塔が崩れ落ち、砂煙が夜空に舞い上がっていく。塔の中にいた星喰いの影の存在が、塔の崩壊とともに消えていくように見えた。
「間に合ったのか……?」カイルが肩で息をしながら呟く。
「まだわからないわ。」フィオラは震える手で持っていた本を見つめた。表紙に刻まれた文字――それは、この世界の古代語で書かれており、解読できない部分も多い。しかし、何か重大な秘密が隠されていることだけは明らかだった。
二人は安全な場所まで退避すると、本を慎重に開いた。中には星々の運命や世界の始まりについての記述が、抽象的で難解な文章で記されていた。その中の一節が、フィオラの目を引いた。
「星喰いは、かつて世界を守る存在であった。だが、ある者たちの裏切りによってその力は暴走し、破壊者へと変貌した。」
「守る存在……?星喰いが?」フィオラは眉をひそめた。「破壊者って……一体誰がそんなことを?」
カイルは別のページをめくり、さらに衝撃的な文章を目にした。
「名を挙げることなき者たちが、世界を支配するために星喰いの力を利用し、そして封印した。」
「名を挙げることなき者たち……」カイルはその言葉を反芻した。「まさか、あの秘密結社のことを指しているのか?」
その瞬間、辺りの空気が一変した。周囲が不気味な静寂に包まれ、木々の葉が揺れる音さえも消えた。そして、暗闇の中から低い声が響く。
「知ってしまったか。」
二人が振り返ると、そこには黒いローブに身を包んだ謎の人物が立っていた。顔はフードに隠れて見えないが、その声には威圧感があり、空気が重くなるような感覚を覚えた。
「お前たちが手にしたものを返してもらおう。」ローブの男は静かに手を差し出した。「それは、お前たちの手に渡るべきものではない。」
「誰だ……お前は?」カイルは剣を抜き、男を睨みつけた。
「私は……名前を挙げることなき者たちの一人だ。」
その言葉を聞いた瞬間、フィオラの顔が青ざめた。「名前を挙げることなき者……まさか、本当に存在していたなんて……」
「その本に記された真実を知ることは許されない。」ローブの男は一歩前に出た。「それは、世界の秩序を乱すことになるからだ。」
「秩序だと?」カイルは剣を握り直した。「ふざけるな!お前たちがこの世界を支配してきたことを隠すための言い訳だろう!」
男は微笑むような仕草を見せた。「いいだろう。お前たちがどう足掻こうと、この世界の支配は揺るがない。」
そう言うと、男は手を振り上げ、闇から無数の影が現れ、二人を包囲した。その影たちは星喰いの神のものと似ていたが、より小型で動きが速かった。
「ここで終わりにしてもらう。」男の声が冷たく響く。
カイルとフィオラは互いに背中を合わせ、影に囲まれながら戦闘態勢を整えた。
「逃げられると思う?」フィオラが息を整えながら言った。
「逃げるつもりはない。」カイルは剣を構え、力強く答えた。「この本が示す真実を知るまでは、絶対に諦めない!」
そして、二人は迫り来る影に向かって突撃した――彼らの戦いが、新たな運命の扉を開くか、それとも絶望の闇に飲まれるかはまだ誰にもわからない。
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