千本ノック

 カクコン10の短編部門のフェスと、KAC2025に参戦した。

 どちらも発表される「お題」に沿った作品を、締め切り日までに公開するというもので、締め切りはかなりタイトであり、カクコンのフェスに至っては、一万文字以内という制約まで付いている。


 最初は気軽な気持ちで参加したのだが、始めてみるとなかなか厳しいものだった。

 


 私はこれまで、しっかりと設定を作ってから、本文の執筆に入る方だった。

 異世界ファンタジーを主に書いていたせいもあり、割としっかりと、世界観やらキャラクターやらを設定して、さらに紙に下書きをしてから、推敲しつつ清書するという、何とも念の入った方法で作品を書いていた。


 だが、締め切りがすぐにやって来るのに、そんな悠長ことをしていたのでは、到底間に合わない。

 なので、簡単な設定だけをして、すぐに本文の執筆に入った。


 頭にあるストーリーを、即座にアウトプットして公開して行かないと、間に合わない。

 公開してしまったものは振り返れないから、前だけを向いて突き進んで行く。

 残り字数を気にしながら、どうにかこうにか話を落として行く。


 何というか、「千本ノック」を受けているようだな、と思った。


「ほらー、もう一丁!」

「休むな! 立て! ボールを拾え!」


 ……あれ?

 もしかして今の時代、「千本ノック」なんてやらないのかな?


 野球なら「千本ノック」バレーボールやテニスなら「千本レシーブ」……サッカーは何だろう?

 とにかくコーチが打つボールを拾いまくる練習。

 千本とまで行かなくても、昭和の運動部は結構やっていたけど……。

 

 何か、あれに近いと、思った。

 いえ、私は演劇部なので受けたことありませんけどね……。


 「千本ノック」ならぬ「千本締め切り?」かな。

 なかなか怒涛だったけれど、短編を書く修行にはなった気がする。


 数を書くことも大切だと感じた。

 その出来栄えはさておき、とにかく書き上げて公開するという過程が、大切かな、とも。

 一万文字前後という文字数のボリューム感というか、収められる話の大きさというのが、おぼろげながら掴めた気がした。

 それは、大きな収穫だったと思う。


 さて、ボロボロになりながらも、全部書ききった、「カクコン」と「KAC2025」


 カクコンでは、一作が中間審査を突破して、KAC2025では皆勤賞とグッズの当選を果たした。

 ささやかなご褒美だったが、素直に嬉しかった。

 


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