夢の入り口
翌日から私は全ての夢をメモするようにした。
なぜか起きて少しすると忘れてしまうので、枕元にメモを置いている。
今までは様々な夢を見ていたが、最近は妙に現実感のある夢が多い。
そして、そのほとんどが実現している。
会社の近くに新しいアイス屋さんができるとか、後輩がミスをするとか。
どうでもいい内容がほとんどだが、どうにも不思議な感覚だ。
翌日起きる出来事が夢として予知される。
自分の能力を確信し、ちょっとしたルーティンが出来た。
朝起きて夢の内容をメモする。
会社に向かい、仕事の前にメモを見返す。
仕事をこなしていると夢が現実になる。
家に帰り、メモを見返す。
日常生活のちょっとしたスパイス程度だが、自分は特別だという充実感があった。
予知夢を見るようになって2か月ほどたったころ、再び大きな事故の夢を見た。
通勤の途中、会社の近くで子供が飛び出しトラックにひかれる。
朝起きた時、予知できるのであれば事故を防げるのではないかと考えた。
自分の力は先に起こる不幸を回避するための力、いつもより早く家を出た。
電車を降りてメモを見返す、あそこの道路から子供が飛び出してくる。
自分があの道路で見張っていれば、事故は防げるはずだ。
夢で見た現場に向かい、子供の飛び出しを防ぐために待機していた。
...しばらく待っても子供は現れない。
このままでは会社に遅れてしまうが、ほっとくわけにもいかない
ふと横を見ると、とても都合の良い柵を発見した。
これを閉じておけば子供は通ることができない。
周りに誰もいないことを確認し、道路の柵を閉じておいた。
これで物理的に通り抜けができないので、子供が事故にあうことはないだろう。
勝手に柵を閉じたので怒られるかもしれないが、人命には代えられない。
その場を離れて会社に向かって歩き出した。
ふと振り返ってみる、信じられないものを目撃した。
柵を超えた何もない空間が歪み、子供が現れたのだ。
突如現れた子供はまっすぐに道路を進み、大通りの車に突っ込んでいった。
惨状を目撃し、ある疑問が頭の中に浮かんできた。
翌日起きる出来事が夢を通じて先読みできる、それは本当だろうか。
予知した悲劇を回避するべく、夢と反する行動をとった。
その結果、人智を超えた力で現実が捻じ曲げられた。
あまりにも現実離れしていて信じられないが、結論は出ている。
現実を予知した夢を見ているのではなく、自分の夢が現実になっているのだ。
この力は危険だ、見る夢によっては悲劇が生まれてしまう。
しかし、見る夢を自分で調整できるようになれば、自分の理想の世界が構築できる。
この日から、自分で夢をコントロールするべく努力を始めた。
夢現 yossy @inaka_mono
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