第6話 混乱

 ホワイトは魔王に抱き着いた。魔王は不思議そうにしていたが、ホワイトの頭を撫でた。しかし、すぐに困惑したようにホワイトは魔王からはなれた。

 そして、頭をかかえた。

「どう……して? いやだ、わからない…」

 ホワイトはそう呟いた。

「どうしたの?」

 魔王が不思議そうにホワイトにそう聞いた。

「さっきまで…ついさっきまで、覚えていたはずなのに」

「…?」

「ホワイトちゃん、どうかしたの?」

 スノウはホワイトにそう聞いた。

「…」

 ホワイトは何も言わなかった。いや、なにかをぶつぶつとつぶやいていたが、何を言っているのか誰にも聞き取れなかった。そして、急に倒れた。

「ホワイトちゃん!?」

「だいじょうぶ?」

 魔王とスノウが心配したようにホワイトのそばへかけよる。

 ホワイトは、目をつむっていた。

「ねむってるのかな?」

「いや、気絶しているんじゃないか? とりあえず、このままじゃないほうがいいよね。近くの家まで運ぶ?」

「そうだね」

 魔王は、ホワイトを持ち上げると近くの家まで運んだ。

「だいじょうぶかな?」

 魔王は心配そうにホワイトを見つめてそう言った。スノウは、ホワイトに薬のようなものを飲ませると、

「しばらくすれば、目を覚ますと思うよ」

 と言った。

「良かった」

 魔王は微笑んでそう言った。

「…魔王、話がある」

 クランベルが魔王のすそを引っ張ってそう言った。

「なに?」

「ついてこい」

 そう言って、クランベルはホワイトのねむっている部屋をあとにした。魔王は、クランベルについていった。棺は魔王についていった。

「ふふっ」

 スノウは、眠っているホワイト以外誰もいなくなった部屋で笑った。

「危なかったあ。危うく君の記憶を取り戻させてしまうところだった」

 ホワイトを見つめてスノウはそう言った。

「記憶を取り戻そうとしたらだめだよ。それにしても、昔にルキがかけた術が弱くなっていて助かったな。弱かったおかげで、僕でも太刀打ちできた」

「…う」

 ホワイトが苦し気にうめいた。

思い出してはいけない。だってその時君は…、と誰かの声が聞こえた気がした。

君は、何なのだろう? その続きが、聞こえなかった。

「…う」

ホワイトは目を覚ました。

「起きた?」

「スノウ」

「おはよう」

「…私、は…」

「大丈夫? 急に倒れたから魔王たちが心配してたよ」

「…そっか。ここは、どこ?」

「さっきの道の近くの家」

「そうなんだ」

「まだ、眠っていてもいいよ。魔王たちも何か話をしているみたいだし」

「…わかった。おやすみ」

ホワイトはまだ眠気が残っていたので、素直に眠った。

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