第8話 体育祭なんて嫌いだ

テストが終わり次は体育祭がやってくる。俺は体育祭が嫌いだ、運動が出来ないからと言う理由もあるが色々な人と協力する必要があるからだ。コミュ障にはとても辛い行事だ。


「神崎はなんの競技出るんだ?」


西田が俺に聞いてきた


「俺が出来る競技なんてほとんど無いよ、運動出来ないの知ってるだろ。せいぜい大縄飛びとかムカデ競走とかだろうな」


「そっか運動苦手ってずっと言ってるもんな」


「そうだよ、特に走りはほぼ無理だ。体力も筋力も無いから走ったら死ぬね」


そう俺が言うと西田は不思議そうな顔をして俺に語る


「俺らクラス対抗リレーあるから全員確定で走るよ?」


「え?」


俺は思わず固まる。走る、?俺が?無理に決まってる足を引っ張ってクラスで浮く未来しか見えない。絶望感を味わいながら出場する種目決めが始まった。


順調に決まっていく競技、だが残念な事に俺のクラスは現在3人休みである為全て決め切るのではなくあくまで仮決定だ。しっかり決まるのは全員集まったタイミングらしい。



昼休みになった。俺はいつも通り体育館倉庫に弁当を持って向かう。黒板を消していた為移動が少し遅くなってしまった。弁当を早く食べないと寝る時間が短くなる、その可能性を危惧しながら早歩きで体育館倉庫へ向かった。


ガラガラガラガラッ


倉庫の扉を開けた時思わぬ光景が広がっていた。


「遅かったね!」


弁当を食べてる坪内が居たのだ。

いやなぜここに居る。遅かったねと言ったな?俺を待っていたのか?


「なんでここに居るんだよ、」


少し動揺しながらそう聞くと


「そういえば初めて会った時も倉庫に居たなって思って!ここで待ってたら来ると思ってた!」


いやどういう事だ。確かに俺が来るかもしれないが何の用で来るんだよ


「何の用で俺の事を待ち伏せしてるんだよ」


「うーん、話したいだけかな?」


新手のハニートラップかと思ったがこいつがそんなことする訳ないと思いとりあえず俺も座った。その後も普通の日常会話をして弁当を食べた。結局寝る事は出来ず、坪内と話し続けてしまった。


「今日帰り一緒に帰ろうよ」


彼女はそう言った。別に断る理由もない為了承した。


「よし!じゃあ学校終わったら校門の前に集合ね!学校終わって10分以内に来る事!」


「はいはい、分かりましたよ」


彼女はニコニコでそう言ったが俺は適当に返事をした。


そんなこんなで昼休みも終わり授業も全て終了、下校の時刻になった。流石の俺でも忘れない、校門に学校終了後10分以内にしっかりと着いた。まぁまだ4分しか経ってないが、


そして坪内が指定した10分以内を過ぎても彼女は来なかった。


「あいつ自分で指定したのになんで来ないんだよ」


と少し呆れていたが、10分はかなりギリギリでもある。気長に待とうと思った。でも20分経っても彼女は来ない。普通の友達なら連絡のひとつでも取るのだろうが、俺は坪内の連絡を知らない。流石に何か用事があったのだろうと思い校内に戻り坪内を探す事にした。


しばらく探すと坪内の姿を見つけた。だが坪内だけでは無かった、もう1人の姿もあった。


近藤陸だ。彼はよく知っている、サッカー部に所属していて運動神経抜群、ただ少し性格が悪い所もある。そんな彼と坪内が何の話をしているのか少し気になった。


「俺と付き合って欲しいんだけどってさっきから言ってるじゃん!」


「だから、無理だって言ってるでしょ。別にあなたのこと好きじゃないし」


どうやら近藤が坪内に告白している所らしい。近藤は確かにイケメンよりだがその性格の悪さが相まってモテはしない。


「今は好きじゃないって話だろ?だからこれから好きにさせてやるって話!」


「だからさ、、無理なものは無理!諦めて」


坪内の答えは完全な拒絶、だが近藤は諦めないらしい


「まだ田中の事引きずってるのか!?フラれたんだろ!もう諦めろよ!」


あいつはなんて事を言ってるんだ、男として最低だろ。禁句でもあるようなワードを普通に言うな


「別に田中くんのことはもう気にしてないし、好きじゃないから」


「じゃあ俺でもいいだろ!」


段々と会話がヒートアップして行った。近藤もイライラし始めたのか貧乏ゆすりが止まらなくなっている。何かまずいそう思った俺は坪内に声を掛ける、


「坪内さん!約束の時間とっくに過ぎてるんですけど、、」


この二人の会話に割って入るんだ声が少し裏返ってしまった。彼女は振り返り


「あ、本当だね。ごめんごめん、今行くから!」


彼女は下手な作り笑いで俺にそう伝えてきた。


「もう私行くから、諦めて」


近藤にそう伝えると走って寄ってきた。ふと近藤の方を見ると明らかに俺を睨んで来ている。挑発かよと思ったが俺にそれを買う度胸は無いので無視した。



「遅くなってごめんね。私から約束したのに」


「別に良いよ、抜け出せるような雰囲気じゃ無かったし」


「またこんな姿見られちゃったな〜恥ずかしいよ」


彼女は顔を赤くしながらそう言った。だが俺はなんとなく分かる。近藤はまだ諦めてない。確実に坪内の事をまだ狙ってる 。坪内も大変なんだな、


「ねぇ神崎くん!」


「え、なに」


急に元気よく呼ばれてびっくりしてしまった


「LINE交換しようよ!今日みたいな事起きた時待たせるの申し訳ないし!」


「LINEやってないです、、」


下手な嘘を着いた。流石にこの嘘はバレるらしい


「嘘つくな〜この前LINEの通知鳴ってたでしょ!はい!私のQRコード!」


そう言って差し出してきたコードを俺は読み取った。


「アイコン犬なんだ、」


ボソッと小さな声で言ったのだが聞こえてたらしい。


「そう!うちの犬なの!可愛いでしょ」


ニコニコしている顔を見るに相当犬が好きらしい


「はい、追加したよ」


「おっけ〜ありがとう!」


LINEを交換するなんていつ以来だろうな。LINEを交換したあと俺たちは分かれた。



その日の夜、俺の携帯が鳴った。普段鳴る訳のないLINEの音に驚きつつメッセージを見る。

坪内からだった


【LINE交換ありがとうね!あと、近藤君に絡まれてた所助けてくれたことも、】


あれは助けたと言うのか?まぁ適当に返信しておこう


【色々大丈夫】


まぁこんなのでいいか、そのまま俺はベッドの中に入った。


【おやすみ】


その通知を最後に僕は眠ってしまった。

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