第9話 僕は熱中症になった

次の行事体育祭を目前に控えている為学校の授業は体育祭連絡が増えた。


「ヤバい、暑すぎる」


もうすぐ夏、肌が焦げるような日差しを浴びまくっているせいで既にぶっ倒れそうだ。


「神崎〜なんで最近はこんなに暑いんだ?俺はお前を恨みそうだ」


「地球温暖化を恨め」


西田になぜか恨まれそうになっているが暑いのは絶対俺のせいでは無い。恨むならオゾン層を破壊しまくった先人達を恨んで欲しい。


しかし本当に暑すぎる。仮病を使って保健室で休もうと思い保健室に向かう。


「お〜神崎くんじゃん!」


「あ、坪内さん」


なぜか保健室に坪内が居た。


「なんでここに居るんですか?体調不良?」


「違う違う!私保健委員だからさ!ここで怪我人が出た時すぐ対処出来るように待機してるんだ」


流石に顔見知りが居るのに仮病は使えない。俺は西田の所に帰ろうと思った


「神崎くん暑いからここ来たんでしょ?休んで行きなよ、クーラー効いてて過ごしやすいから」


「え、いや、でも」


「はーい入った入った〜」


そう言い彼女は俺の腕を引っ張り無理やり保健室に入れた。


「あ、涼しい、」


「でしょ?ここでサボろう」


真面目な彼女からサボるという言葉が出てくるのは以外だった


「喉乾いてる?飲み物あるよ?」


「じゃ、じゃあ貰おうかな」


俺の言葉を聞いた彼女は冷蔵庫に向かって行きスポーツドリンクを手にした。

俺は自分のクラスの競技練習を眺めていた。


(みんな頑張ってるな)


そんな少し暗いことを考えていると首元に突然ひんやりとした物が当てられた


「ヒャッ」


「なにそれ、女の子みたい」


そう笑いながら俺にスポーツドリンクを渡してきた。


「急に当てるの辞めろよ、びっくりするだろうが」


「ごめんごめん」


少しムッとなる俺に彼女は笑いながら謝った。


「これ勝手に飲んでいいやつなのか?」


「これは熱中症になりかけの人用の飲み物なんだ〜」


「じゃあダメじゃないか、俺に飲ませちゃ」


「熱中症って言えばバレないの〜」


「いや、バレるバレないじゃ無くてだな、」


俺は文句を言おうとした、俺は怒られたくないから。そう思い彼女の方を振り向く。


(顔が近い、、)


思わず呼吸が止まる、肌が近い。なんて綺麗な肌をしてるんだ。そんな事を思って居ると彼女は俺の耳元で囁いた。


「先生には秘密だよ?2人だけの」


超至近距離で耳元に囁かれた為顔が沸騰しそうなくらい熱くなる。俺は思わずスポーツドリンクをガブ飲する。


「ちょっと、いきなりそんな飲んで大丈夫?」


「今熱中症になった、だから秘密も何も無い。大丈夫」


俺は今熱中症になった。熱中症になると熱を逃がそうと顔が赤くなるものだろう?つまり今俺の顔が赤いのもきっと時差で熱中症が来ただけだ。そうだ、そうに違いない。


「こんな涼しい部屋にいてなるものなの?」


「時差でなっただけだ」


少しカッコつけて言ってみたが彼女はよく分かって居ないようだ。


「あ!そうだ!神崎くんの事神崎って呼び捨てでも良い?」


なんでまた急に、


「別にいいけど、」


「本当に?じゃあ神崎って呼ぶね!」


「あ、あぁ好きにしてくれ、」


きっとくんを付けて呼ぶと対等な立場に感じて嫌なのだろう。坪内は俺を呼び捨てで少し下の立場として見たいのだ。そう思うとなぜか納得した。


「じゃあ私の事も坪内って呼び捨てで読んでね」


「な、なんで?」


「私だけ呼び捨てはおかしいでしょ?お互い呼び捨ての方がいいよ」


理由はよく分からないが彼女がそう言うなら従っておこう。


「わ、分かった」


「じゃあ読んでみて神崎!」


「つ、つ、つぼ、」


「何〜?聞こえないんですけど?」


「つ、坪内…」


俺は隙間風の様な小さな声で呼んだ。聞こえる訳が無いような、そんな小さな声だ。


「呼んでくれた!」


だが聞こえていたようだ。なぜか凄い恥ずかしい。


「恥ずかしがって呼んでくれないと思ってた!」


「お、俺を舐めるなよ、、」


だが緊張してしまったのは事実だ。なぜだろう、ただ名前を呼ぶだけなのに。西田の事は呼び捨て出来るのに。なぜ坪内の事は呼び捨てで呼ぶのに躊躇ったのだろう。


今日はやっぱり気温が高すぎる。俺は熱中症になったようだ。この涼しい部屋に眩しすぎる太陽があるせいで。

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素直に言えない僕は君に恋をする @aliceTaylor

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