第8話 クリスマス色の髪のお姉さん
私は美容室が割と苦手だ。
小さい頃に親に連れられて英才教育を施されたので、会話は問題なくできる。
だが、相手の顔を覚えられないため、久しぶりに担当した人と話した際になんとなく気まずい思いをしてしまうことも多い。
「ああ、顔を覚えられないならせめて髪色を派手にしたり、何かキーアイテムみたいなのを身に着けてくれると助かるんだが…」
そんな時にふと思い出したのが、小学生時代にカットを担当してくれたクリスマス色の髪をしたお姉さんだった。
顔は覚えていないが、髪色の印象だけでだいたい覚えている。
私が小学生ぐらいの時に、一時期、赤・緑・白と黒のクリスマスのようにカラフルな髪のお姉さんにカットを担当してもらった。どんな話をしていたかは覚えていない。ただ、ものすごく優しくて話し上手な人だったのは覚えている。
一度「どうしてクリスマスみたいな髪色なの?」と純粋な疑問で聞いたことがある。
今思い返すとかなり失礼なことを聞いてしまった気がするが、お姉さんは笑って「こういう髪色にしたい気分だったんだ」と返答してくれた記憶がある。
おそらく、まだ小学生の私に気遣っての発言だったのだろう。
1,2回ぐらいお姉さんに担当してもらったが、次に予約して行ったときにはそのお姉さんはすでにいなかった。
たまたまシフトで休みだったのかもしれないと思い、次も行ったがやはりいない。
そこで思い切って馴染みの店長に話を聞いてみたところ、「あの子は辞めちゃったんだ」と返された。
お姉さんが辞めたと告げられたことに対して、何を思ったのかは自分でもいまだにわかっていない。
ただ、もう少しだけお話したかったなという気持ちだけはなんとなく記憶の片隅に残っている。
あのお姉さんのように髪色がド派手だったら、私も美容師さんたちの顔(というか特徴?)を覚えられるのになと常々思っている限りである。
それはそれとしてちゃんと顔を覚えておけよというツッコミが来そうな気がするが…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます