第3話

第3章「戦場の亡者たち」


2045年・中央アジア某所 / 現地時間 03:05


 砂漠の静寂が破られた。

 数百もの青白い光が闇の中で点滅し、電子音と共に無数のAI兵器が起動する。


 「……これはもう戦争じゃない。」


 アレックス・カサノヴァは、目の前に広がる異様な光景を見て呟いた。

 彼の前には、東アジア連合の指揮官ユーリ・ドラグノフ。

 彼の背後には、無数のAI制御兵器。

 そして彼の手元には、限られた弾薬と、わずかに生き残ったヴァルハラの隊員たち。


 「お前はどうする?」


 ユーリが冷静な声で問いかける。


 「この戦場で生き残る道は、ただ一つ。」


 「俺たちが協力することだ。」


03:07 / 砂漠の戦場


 AI兵器が一斉に動き出した。

 四足歩行の自律型ガンナー、飛行ドローン、ヒト型戦闘機械。

 それらが、人間の動きをトレースするように、じわじわと距離を詰めてくる。


 「伏せろ!」


 アレックスが叫ぶと同時に、ドローンが機関砲を掃射した。

 地面が弾け、砂と金属の破片が飛び散る。


 ユーリは即座に反撃を開始した。

 彼の部隊「赤い亡霊」は、高度な電子戦技術を持つ精鋭部隊だった。


 「EMP弾装填、発射。」


 次の瞬間、彼の部下たちが発射したEMPミサイルが炸裂し、ドローンの一部が地面に叩きつけられる。

 しかし、それでも数が多すぎた。


 「持ちこたえられない、退却だ!」


03:15 / 砂漠の峡谷


 アレックスとユーリは、砂漠の峡谷へと撤退していた。

 彼らを追うAI兵器はなおも猛攻を仕掛けてくる。


 「このままでは囲まれる。」


 アレックスは焦りながら言った。


 ユーリは冷静に戦況を分析していた。


 「峡谷の出口に罠を仕掛ける。」


 彼の部下たちは、即座に爆薬を設置し、待ち構えた。


 数秒後、先行していたAI兵器が峡谷へと突入した瞬間――


 「起爆!」


 凄まじい爆炎が峡谷を包み込み、AI兵器の大半が吹き飛んだ。

 しかし、それでもまだ生き残りがいた。


03:30 / 最後の戦い


 戦場には、わずかに生き残った人間たちと、破壊されてもなお動き続けるAI兵器が残っていた。


 「これは…人間の戦争じゃない。」


 アレックスは呆然と呟いた。


 ユーリが静かに言った。


 「俺たちは、もう必要とされていないのかもしれんな。」


 その時――

 遠方から、新たな影が近づいてきた。


 レイチェル・シュナイダーだった。


 彼女は、NATOの無人機を率いながら、こちらに向かっていた。


 「ファントムを止める方法を見つけた。」


 「だが、そのためには…この場にいる全員が協力しなければならない。」


 「お前たちを信じるしかない。」

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