第11話 ジャックとアン
アンは昔から男の子と走り回り、女の子をいじめる奴には無言で、胸ぐら掴んだりする女の子(今も学園でみんなの用心棒である。でも、令嬢として完璧。)領地でも、王都でも、屋敷が近くて、そしてとっても素行が悪いジャックはよく蹴られていた。
「あの日もしもアンがあの場にいたらお二人の前で無言で殴ったりしてそう」と私が言うと、
「フフ、居なくてよかったかもね。でも彼女は一生に一度のあの場に居なかったのを今も残念がっているわ。あ、事件と関係なくね」
「彼女は社交的なおばあさまに連れられて、五歳ぐらいから集まりに参加されていたらしいわ。あの場にいることが後のデビュタントとは違う意味で貴族社会へのお披露目だものね。楽しみで、すごく準備していたらしいわ。悔しいでしょう。まして、あんな事件が……見たかったと思うわ」
「そうでしょうね。あれに関しては、ずっと悔しいと言っていて、そして、あの場で制裁していればお二人とも知り合い……といってたわ」
「想像できる……」
「その後一切風邪すら引かないと……二度と風邪引かないと誓って、もっともっと体を強くと凄い鍛練をなさっているのよね、今も」
「軍に入れそう……」
「本当に……彼女極端なのよね……」
私ほどではないが、アンも小さい頃は体が弱かった。しかし、七歳ぐらいになると元気になり、反動からか、庭や屋敷の中で大暴れしていた。そして木に登りお庭の池に落ちてしまった。当然のごとく、アンはかなりしつこい風邪を引き、その時間が悪くお母様が妊娠中で、移さないようにと領地に送られた。ガーデン・パーティーのちょうど一ヶ月前の事でした。領地にいっても風邪が長引き、結局出られなかった彼女は、回復後野山を走り回りの大暴れしていた。そこへ、避暑で領地にやってきた、ジャックがお見舞いに来た。そして、ガーデン・パーティーの話をして「悪い女をやっつけてやった!」の一言で彼女からの飛び蹴りを無言で食らった。
「女の子に最低。その日の事はね、残念だけど、知っているわよ。しかもこの辺の村人なんかもみんな知っているわよ。王太子と王弟に注意されたらしいじゃない」とか説教され、「ほらここに書いてあるの!」と今度は冊子で打たれた。彼は青くなりながらも、
「だから、騙されている……」とかの言い訳をしたが、彼女は一切耳を貸さずに、彼を引きづり(ジャック……このころは彼女より小さい……)鍛練だ!!といって郡守備隊の修練所に放り込んだそうだ。彼女……八つ当たりしたわね。
「この話も冊子に載ったのよね」とコンスタンス……
「ジャックは伯爵家では、手に負えない……お付きの人も家庭教師も皆辞めて行ってたと。ガーデン・パーティー後にはかなり方々から苦言を呈されて、ほとほと困っていたらしいの。彼女の行為に対して皆さん大喝采だったと、その後、正式に郡守備隊の少年部に入れられて、領地ではずっとそこで、相当アンを恨んだそう……諸悪の根源とかいってエミリーもね……」
「恨むのはまあ……仕方ないというか。でもまあ、素行が悪いと部隊でペナルティを貰うので、そこは改善されたらしいわね。たしかに学園に入ってから暴力沙汰の話は聞かないわ。でも、彼女には口でも負けると……」
「その後、顔を合わせれば嫌味の応酬、だけど周りから見れば、なんか仲良しという状況に。で気づくと二人の世界が……」
「最後の一押しは周りね。確かに、そういう事もありうるわね。しかし、婚約飛ばして結婚って凄いわよね」
両家はそれぞれ子女の縁談をまとめようと動いていたが、二人の様子が両家に伝わると、それは素晴らしいと言うことでトントン拍子で話が進んだ。マリン伯爵家側も嫡男(一人っ子)が問題児として悪名高く縁談がまとまらず困り果てていたところだったようだ。しかも、さっさと結婚させようという形で。実質的な結婚ではないが。(さすがに、学園内は人の目がないとこはないので、本当にそうでしょう)婚約と同じように二人きりにはならないようにしているみたい。コンスタンスは、
「それはねアンが婚約ぐらいじゃ、なに言い出すか分からないと伯爵家は思っていたという事らしいの。罵りあいそうと。伯爵夫人はね、私、王立軍大学校に入って、女性将校目指す!とアンが言い出さないかハラハラしていたらしいのよ……」
「今は、淑女たちが訓練に参加とかもあるのに、だいたい乗馬と射撃は淑女の嗜みの一つになってきちゃっているのに、あのアンが本気になればそれでは止められないけど……」と私が言うと、
「それでも……と思っておられたらしいわ……でも、ジャックも……丸くなったと。もちろん偏見は無くならないし、エミリーの悪口言って、彼女に誰の事でも人前では止めなさいと言われるようで。あの夫婦学園でみんなが見ているのよね……そして、恋愛小説みたいな冊子が出来たわね。で、で本題は……もちろん二人の気持ちだけで、こう言うことが王太子様の周辺で起こらないとも限らないのよ」
その通りです。
「念には念を入れよ……ですわよ、そして王妃様の動きを王太后様もお読みになっているの。自分のご子息の立場が国王一家の脅威になることもあるかも……潜在的なもののね。それでも、王太后様は王弟様が結婚出来ればと思うのは当然。未婚の王族は体面が余り……ですから。でも、お相手の選定が大変。少しでも王位につく可能性がほんの少しでもあれば、野心のある女性が近づかないとも限らないわ」とコンスタンスは強い口調で言う。
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