第12話 ファウスティーナ王妃と寵妃たち、とある女王
仕方のない事だけど、王族というか貴族などもよね。次男以降はスペア。もちろん、家族というか一族の結束が強い家もあるし、仲がよいのが普通と思いたいけど。長男に子供が出来れば、途端に用済み扱いされる場合も。王太后様はどのような思いなのだろう。
「そういうば、陛下のご意向は?」
「王妃様と同じよ。陛下の意を汲んで動いておられるわ」と、コンスタンス。やっぱりだわ。寵妃に関する考え……
「麗しのファウスティーナ妃ですね」「そう、麗しの女神」「まあ、それなら……」
ファウスティーナ妃は今の国王陛下のお母上にあたるお方。トーレード王国の出身で(あ、クラレンス王女の輿入れ先)先代の陛下とは、政略結婚ではあるが、固い絆と深い愛情を持ち、おしどり夫婦として知られた。しかし、王子様(今の陛下)がご誕生された数年後、二人目の王子さまを死産されて、そのままお亡くなりになってしまわれた。王様は非常に悲しまれ、体調も崩されてしまい、何人かの側近が意思の疎通をはかり政務するという感じであった(なんというか悪い大臣居なくてよかったね)
ところが、しばらくしてやっとお出ましになられた、建国記念祭典の閲兵式で王国の軍において初の女性将校が颯爽と騎馬で通りすぎた姿に一目惚れしてしまい、彼女がファウスティーナ妃に少し似ていた事もあって、寵妃にしてしまった。このあとがヒドく、立ち寄った商店の女主人、女性官僚、王宮侍女の頂点の侍女長の補佐係であり、才媛として名高く高位貴族が挙って求婚したという伯爵令嬢、など合わせて五人を寵妃にした。
「しかし、最愛の王妃様を亡くされたとはいえ、その後寵妃を沢山お持ちになるってどうなの?」と、コンスタンスが突然言い出した。「何が、ファウスティーナ妃よ」と続く。え……。
「どうしたの?」
「だって、酷いと思わない?なんか、口実にしか思えないのわよ……」
「口実……確かにそうだわ。それでも、ファウスティーナ妃は何があっても悲劇の人よ……」と、私がつい呟くと、
「分かっているわよ。でもねなんかね」
「それも解るけどね。物語のそういう人って女性達をとっかえひっかえで、前の女性達には目もくれないってのが多いけど、陛下は……五人全員と長く平穏に続いたと……ええと、擁護してみようとして失敗したわ……表向き寵姫様方の中もよろしく……」ここまで言った所で、笑い声に気づいた。
「擁護って、あなた……」
「すいません……寵妃方はあの頃、王妃不在の中、それなりの地位だったと」
「もちろん、格の高い儀式の時は王妃代理を王妹さま、嫁がれたあとは、私の母上とかの王族に近い公爵夫人が務められたのよね。でも、それ以外の行事は寵妃方よ」
「でも、やはり反発は多く、彼女達がどんなに素晴らしくても……寵妃じゃなくて高位貴族夫人ならいいのに。とか……言われたり書かれたり。やはり、寵妃の是非よね」
そういえば、このころ冊子文化がメジャーになってきたのよね……これも、純愛、女性たちの友情から面白おかしく、そして風刺まで書かれたらしい。書き手側の規制が厳しくなる前の話だが。などと考えていると、コンスタンスがまた語気を最初から強め
「自分達も愛人とかいて庶子も沢山なのに、寵妃様方に文句つけるなんて、最低だわ。妻はいちいち浮気のひとつや二つに反応しない。愛人を作ったら受け入れるしかないのよ。あんな素晴らしい女性達で、諸外国から称賛されたのも凄いのよ。まあ、大体愛人がいない男性王族は居ないか……」と、今度は彼女が興奮している。私はふと思い出して、
「数百年前、とある国に君臨されていた女王様は愛人を沢山抱えていて、それ以外にも見目麗しい男性ばかりを集めて近衛兵や侍従として侍らせていたと。そして、美しい令嬢を侍女にして、彼らのいわゆる愛のキューピッドになっていたと」
「というより恋愛遊戯ね。あの二人をくっつけるそういうの……三角関係とかも……お遊びって感じね。女もそういう立場になると……ちょっとあの女王陛下のことは言わないで!話が終わらないですわよ!本当にもう……」
と彼女が言った後小声であの方が帰って来ちゃうじゃないと言った……確かに何時間たったのだろう……気まずいな……兄が帰って来たら。
「ごめんなさい。エミリーや王弟殿下の立場など了解でございます。で、彼女をさりげなく認めさせるようにするのですね?」
と、私が少し早口で言うと、
「そうですわ。もちろん八百長なしでね。裏工作なし。露見したら終わりよ」
「彼女は優秀ですので、可能ですわ」
「卒業式前の芸術週間あれが勝負です。みんなの晴れ舞台でもありますが……」
「彼女を光らせるのですね……普通にやれば平気ですわよ」私は断言してしまった。それを受けてか、
彼女は扇を閉じて握りしめて腕をつき上げて高らかに宣言した、
「それが、王家より賜った、学園のわがクラス、そして生徒会の使命です!」
私もつられて、はいっと叫んでしまった。
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