あなただけのマリリン・モンロー

華周夏

あなただけのマリリン・モンロー


夏になりきらない日の汗は

滲んで 

纏わりついて


夏の汗は

滴り落ちて 

寧ろ爽快


どっちも君だよ


ベタベタ話しかけてくると思ったら

大きな口を開けて

友達と笑いあったりして


そう思っていたら

静かに 本なんか読んじゃって

眼鏡なんか かけちゃって


笑っちゃう


『眼鏡 雰囲気変わるね』

本から顔もあげないで

『こういうのは 嫌い?』


嫌いだったら声をかけてない

君をずっと目で追ってないよ


だから解るの

君の視線の先に

私がいないこと


いつも いつも

あの子を見てるの知ってるよ?


『大嫌い 格好つけちゃってさ』


大嫌いだよ

君にとって私は 

ペットボトル


一時の楽しい時間を過ごして

捨てるだけ


それでも構わないけど

それでいいのに

一生懸命笑う私は馬鹿みたい


カーテンが夏の風を連れてくる

私の制服のスカートも

やるせない気持ちも


白くおおきく膨らんで

マリリン・モンローのワンピース


『これあげる 似合うと思って頼んだ』


高めのアクセサリーの店

あの子の同じブランドの髪留め


『お前の方が 似合うと思った』


真剣な眼差しと 柔らかな声

私は忙しなく

プレゼントを髪に飾る


『やっぱり 可愛いな 俺ラッキーだな』

『何が?』

『お前がこんなに可愛いこと クラスの奴らが気づいてなくて』


夏のカーテンと

髪留めに

留め損ねたおくれ毛と

制服のスカートが


音を立ててめくれあがって

二人だけの世界


机も

ロッカーも

黒板もない 


君と私だけの世界


『可愛いよ 似合ってる』


はにかんで笑う君が らしくなくて

何故か私は君にしがみついて泣いた


私は

恋を知った

魔法はとけて


私はただの女子高生

マリリン・モンローではなくなる


それでも君は

冴えない私を


見つめて笑う


日本の恋人は少し無理

あなたの恋人になりたいの



───────────《了》

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あなただけのマリリン・モンロー 華周夏 @kasyu_natu0802

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