第7話『かもめインターハイ予選』
花子と遊んだり、尊乃のために生徒会を探ったり、美琴とおしゃべりしている間に一週間が経った。
現状でも頑張っているとは思うが、最終的にはこの二倍の人数と仲良くしなくてはならない。そう改めて認識した零八は友月から送られてきた資料を改めて見返してみた。
【名無しのクラスメート】を【開かずの間】と書いたり、【放課後のピアニスト】を【歌うベートーヴェン】と書いたりといくつかミスはあるが、概ね信用していいと思う。
七不思議の1、2、3とはもう遭えたから、次は順番的に七不思議その4にしようと思い、資料を信じて体育館へ向かった。
七不思議その4【跳ねるバスケットボール】
放課後、部活が終わった体育館でまだボールを跳ねさせる音が聞こえる。気になった教師が見にいったところ、ひとりでに跳ねるバスケットボールを見つけた。その教師は片付けようと近づいたが、ボールは高く飛び上がり教師の手に届かないところにとどまってしまった。そこで怖くなった教師は急いで体育館から出た。怪我をしたなどの報告はないが、その後も多くの教師・生徒が音を聞いている。
花子と遊んで時間を潰し、体育館部活が撤収したのを確認してから扉を開け──
ヒュッ──パァン!!
扉を開けた瞬間何かが飛んできた。『それ』は零八の足元でバウンドすると零八の顔に向きを変え、当たる直前で急停止して来た方向に戻っていった。
それはバスケットボールだった。だが明らかにボールの動きではない。ヨーヨーのように糸でも付いているようだった。
「アタシのテリトリーに入ってくんな。一歩でも進んだら、当てる」
零八が目撃したのは、空中に浮かぶ無数のバスケットボールと、そのひとつに座って零八を見下ろす少女だった。その
「えっと……僕は神呪零八。奈々との賭けで七不思議全員と友達にならなきゃいけなくて、君のことを知りたくて来たんだ」
「七不思議その4【跳ねるバスケットボール】
「でも──」
ものすごい勢いで飛んできたボールが零八のみぞおちに直撃する。そのまま体育館の外に弾き飛ばされた零八は、扉がひとりでに閉まるのを見た。
「ちょ……っと! 待っ、て」
それから『彼女たち』が来るまで零八は痛みに悶えることになる。
「ねえ、真紀ちゃん。もうみんな帰る時間なのに倒れてる人がいるよ」
「そうだね、志帆ちゃん。保健室に連れていったほうがいいよね」
「でも、真紀ちゃん。保健室の先生も帰っちゃったよ」
「それなら、志帆ちゃん。会長のところに連れていこうか」
「いや……大丈夫。多分そのうち、よくなる」
零八は腹を押さながら、なんとかそう口にした。
「ならよかった。そしたらなんでこんな時間にこんなところにいるのか話してほしい。生徒会として理由もなく居残る生徒を見過ごせないの」
「待って、真紀ちゃん。多分この人会長が言ってた協力者だよ」
「じゃあ、志帆ちゃん。この人は【跳ねるバスケットボール】を調べにきたってこと?」
「いや、真紀ちゃん。本人に訊こうよ。あのー、そうなの?」
息ぴったりの言葉のキャッチボールだ。零八は感心しながらも、それを急にこっちに飛ばすな、と思っていた。
かもめの七不思議名を知っているところや、『生徒会』『会長』と話していたことから七不思議に多少は詳しいと見ていいだろう。友月を信頼する延長で零八は真紀と志帆に少し心を開いた。
「う、うん。追い返されたけどね」
「ねえ、真紀ちゃん。これは共闘する流れじゃない?」
「そうだね、志帆ちゃん。ウチも同じこと思ってた」
「ということで協力者君」
「一緒に【跳ねるバスケットボール】を攻略しようよ」
左右から手を差し伸べられる。ここで手を取って立ち上がれたらカッコよかったのかもしれないが、零八は腹痛に悶える苦笑いを浮かべながら、なんとか頷いた。
それから腹の痛みが治るまで話を聞いたところ、ふたりは一年生ながら友月に声をかけられて生徒会に入り、今は七不思議に関する調査をしているらしい。
「でもウチらは七不思議が見えない。本人と接触できるのは協力者君だけ」
「あたしたちはボールを受け止める。それくらいならやれるわ」
こうして役目は決まった。もう一度彼女と話をしてみようと立ち上がる。
そうして零八はふたたび体育館の扉を開いた。かもめは変わらずの魔王モードで三人に増えた零八たちを見下ろした。
「アタシ、あんたがそこまでバカには見えなかったんだけど。とんだ愚か者みたいだね。骨折れなきゃわからない?」
「帰れというなら今日は帰るけど、まだ次会う時の約束をしてないことを思い出したんだ」
「くだらない。あんたに次なんてない」
「そう言わ──」
パァーン!!
「ウチが守るって、約束だから……ね」
零八を庇った結果、七不思議の攻撃を背中に受けて真紀は倒れた。零八は心の中で礼を言って、かもめへの次の言葉を紡ぐ。
「せめて僕に、本当にバスケが君より下手であるかを見せる機会をちょうだい!」
「身長、筋肉のつき方、それから熱量。プレーを見るより明らか」
そして話は終わりとでも言うように、二発目が飛んできた。
「四番バッター
そう言って白い棒を掲げた志帆は、宣言通り飛んできたバスケットボールを打ち返した。
腕が折れそうな豪速球を、細い棒で、辛そうな顔もせずに打ち返してしまった。
「楽勝」
「くだらないもの持ったやつ連れてきて……余計にあんたの言うこと聞くわけにはいかない」
ため息を吐いたかもめは背後に数えきれないほどのボールを構えた。それらはバスケットボールだけじゃなく、ありとあらやるスポーツ用のボールがあった。
「二度とくんな、バーカ」
体を揺さぶられる感覚で零八は起きた。頭が少しクラクラする。
「ねえ、真紀ちゃん。起きたよ」
「そうだね、志帆ちゃん。よかった」
辺りを見渡すとそこは保健室だった。先生は居らず、先に目覚めていたふたりが介抱してくれたらしい。
「協力者君。今回は残念だったね。でもお疲れ様、頑張ったよ」
「また【跳ねるバスケットボール】に挑む時は連絡してほしいな。協力するよ」
「──ありがとう」
「うんじゃ、ウチらは先に帰るから。家族に心配かける前に帰りなよ」
「怒られちゃった時はあたしたちが証人になるよ。協力者君は生徒会の手伝いをしてました、ってね」
そう言い残してふたりは帰っていった。時計はもう八時半だ。どんなに頑張っても心配をかける前には帰れないだろう。母に生徒会の手伝いをしていた旨を送信し、警備員の目に留まらないように気をつけて帰った。
その夜は何度も反省をしたが、悔しがっている場合じゃない。気絶したせいで眠れない夜を、計画を立てるために使った。
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