九尾の権能
「――――――と言う事で【鬼ヶ島】に交易出来る物を探してるんだが……おーい、聞いてんのか変態」
鉄が手に入る経緯と鉄を導入出来そうだとパッツに伝えた途端、頭がショートしたように驚いた顔で止まっていた。
「ショートしたなら仕方ない。叩けば治るか……ふん!!」
「あ゛ぁん!!」
そういう所だぞ変態。
普通は悲鳴上げる所を何故喘ぎ声になるんだ。
「戻ったか?」
「…………あともう一回だけ」
「よし、お前ら聞いたな。槍で串刺しに――――」
「それはやり過ぎだって!!」
変態には適度な快感を与えちゃ駄目なんだな。
身の丈に合わない激痛を与えるか普通に接する方が良いのかもしれない。
「それで交易出来る物を探してるんだっけ」
「ちゃんと聞いてんじゃねぇか」
「例えばお酒なんてどうかな」
お酒か……確かに鬼ってお酒が好きなイメージあるしな。
【鬼ヶ島】の帰り際に酒談してる鬼も居た気がする……。
「作れるか?」
「勿論、必要な大麦も実家から持ってきたから氷の妖精達の〈成長〉で栽培可能だよ」
大麦って事はビールか。
俺学生だから酒飲まないんだよなぁ……。
親父が飲んでるの見たことあるけど、実際に旨いのか全然分からんな。
「じゃあ任せてもいいか?」
「任された。お酒以外にも果物とか野菜とか育てておくから楽しみにしててくれ」
これで交易の特産品問題は解決。
鉄製品が我が国にも流れ込んで来る事だろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うーーーーーん」
内政はメイク、食料関連はパッツに任せるとして、後足りないのは戦力なんだよなぁ……。
我々【スノーフォックス】の現在の戦力としては、雪の妖精約300名、イエティ約100名、【鬼ヶ島】ぐらいだ。
正直数が少ないのは仕方ないと割り切るしかないが……それでもまだ心許ない数字だよなぁ。
「それに……魔法か……やっぱ俺も護身用に覚えておくべきなのかな」
正直魔法を使用する為にあそこまで敷居が高いとは思わなかった。
それでも【魔導帝国】は何とか導入して大きな戦力を確保している訳で……面倒くさがらず学ぶべきなんだろうか。
「うーーーーーん」
「悩んでおるようじゃの」
「お前がもっと働いてくれれば、この悩みも消えるかもなんだが……」
「妾は君臨するのが仕事じゃからの〜」
せめて何か魔法教えてくれよ。
九尾の焔を生み出せるぐらいだし、何かしら魔法持ってそうなんだよな〜教えてくんないけど。
「何じゃ、せっかく妾が褒美をやろうと思ったのに」
「ちなみに何か聞いても?」
「権能」
権能?
また変な単語が増えたぞ。
「権能というのは上位存在が家臣に分け与える特殊な能力の事でな、魔法なんてものより優良じゃよ」
「本当か!!」
魔法とはまた別の特殊な能力……凄く欲しい。
それに、さらっと
「国に尽力してくれた礼じゃ、受け取っておけ」
[プレイヤートグは玉藻前から〈巨大化〉の権能を賜りました]
〈巨大化〉
九尾の狐、その権能の一つ。
3分間、対象一体を大きくする事が出来る。
効果が切れた後、再び使える時間は5分後。
「〈巨大化〉……この
「その通りじゃ。石を岩のように大きくする事も、己の身体を巨人のように大きくする事も出来る。その代わり魔法とは違って一度使うと一定時間使えなくなるのが欠点じゃ」
「いやいや、それを加味しても凄い権能じゃないか!!」
「そうじゃろ? 大事に使うんじゃぞ〜」
これがあれば……もしかしたら
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