第10話 共闘成立
宇宙≪そら≫くんのマンションの相変わらず殺風景なリビングのテーブルを四人で囲んだ。
部屋の様子に興味津々の弥生をしり目に、早速アリッサが用件を切り出した。
「本部と交信をして事情を説明し、特別に禁則事項を解いてもらったわ」
いつの間にそんなことをしたのか全く気が付かなかったが、未来人には未来人のやり方があるのだろう。
「私は時間を管理する国際組織の一員。まずは私が存在する未来世界の成り立ちについて、簡単に説明させてね」
アリッサは、彼女の存在する未来の世界線とその修復能力について話を始めた。
「画期的な新発明をするはずだった人が不慮の事故で亡くなった場合、その世界の未来は大きく変わると思う?」
一時的に状況は変化するものの、その発明は遠からず別の人によって成し遂げられ、未来も発見者が亡くならなかった場合と同じ世界線に徐々に収斂していくらしい。
「時空の流れそのものに自己修復能力があって、多少の揺らぎであれば吸収して修復してしまうの。そうして今私がいる未来世界は、存在し続けることができる」
ところが、アリッサの所属する組織は、私たちのいる時代で地球外を震源とする時空の揺らぎを観測した。
「未来を改変してしまうほどの大きな揺らぎが過去で発生すれば、私が存在する世界は、その瞬間に消えてなくなってしまう」
組織の指令を受けて、彼女は、何度もタイムループを行い、我々の時代に潜入調査を行った。
「そして、ようやく宇宙くん、あなたを見つけたってわけ」
「最初は、あなた自身が揺らぎの発生源と思った。でもそうではなかった。震源はあなたと敵対する組織の方。宇宙くん、率直に聞くけど、あなたたちは何者? そして彼らは何を意図しているの」
「僕は、地球人がアルファケンタウロスと呼んでいる星系の惑星の生命体によって生成された地球人コンタクト用ヒューマノイド。僕のミッションは爆発的な増殖と自律的進化を続けるこの星の観測と報告」
「やっぱりね。ということは、宇宙くんの惑星は、この星の進化を阻害する意図までは持っていないということね」
「上層部の意図までは分からないが、そのようなミッションは受けていない」
「でも、あなたの対抗勢力はそうではないみたいね」
「同じ星系の別の惑星からも、僕のようなヒューマノイドが送り込まれている。そのミッションに地球人の自律的進化を阻害するプログラムの実験が含まれていると推測する」
「ってことは、あの中にそのヒューマノイドがいたって訳?」と私が口を挟んだ。
「いや、いなかった。あの連中は基本馬鹿だから、彼らに利用されたのだと思う。姫乃、姫乃は平和の反対って何だと思う?」
「うーん、戦争?」
「平和とは社会の秩序が保たれている状態のこと。平和を壊すのに必ずしも戦争は必要ない。精神に作用して無秩序、混沌を引き起せばよい。それが彼らの常とう手段」
「あれだけのことをしても警察が来なかった。廃工場の周囲には結界が張られていたのだと思う。彼らはあの近くにいて、成り行きを観察していたはず」
「ところで弥生さん、あなたの力は何」
「私は、最近この力を、稲荷神社の神の使いの白狐のお告げを受けて覚醒させた。稲荷神社の神は宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)、五穀豊穣、商売繁盛、家内安全をつかさどる神様。その神威を受けた私の力は、この国の安全に害をあだ為すものにしか発動しない」
アリッサが三人の立場を総括した。
「なるほどね。宇宙くんは、地球人の観察と報告がミッション。そのために地球の自律的進化を阻害しようとする敵対勢力を排除する必要がある」
「弥生ちゃんは、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)に代ってこの国を脅かすものと戦う」
「そして私は、持続的発展を続ける地球の未来を改変しようとするものの排除がミッション」
「要は、三人とも、あいつらをぶっ飛ばすっていうことよね。私たち、共闘しましょう。取り急ぎ、この歴史部がその参謀本部ってことでいいわよね」
「了解した」
「それで構わない」
ちょ、ちょっと待ってよ。歴史部の部長は私なんですけど。
宇宙人と未来人と魔法少女に交じって普通の人間が一人、私は地球の平和を乱すものと戦うという、とんでもない部の部長になってしまっていた。
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