隕石の降る夜
隕石の降る夜
その日の夜、僕たちは友人何名かを集めてホームパーティーをしていた。
男女数名でお酒とお菓子を片手にパーティーは盛り上がっていた。
「そういえば今日は流星群がピークの日じゃないかな」とその内の一人が言い、僕たちはカーテンを開けて窓から町明かりが点在する中にうっすら浮かび上がる夜空を見上げることにした。
しばらく夜空を眺めていると、その内に幾筋もの光りの線が夜空を流れて行き始めた。
わぁ、と女の子達は声を出して感嘆し、僕もすごいなぁと思いながら夜空に浮かぶ光りの筋を見入っていた。
その時だった。
突如として夜空が急に閃光のような青白い光りに包まれたかと思うと、僕らの眺めているすぐ上空を青白い大きな光りの塊が夜空を切り裂き滑っていった。
その眩しさに僕は目が開けていられず、思わず手のひらを翳してまばたきを繰り返した。
それは本当に一瞬の出来事だった。
青白い光りの塊は僕らがパーティーをしている家のすぐ上の方から、左斜めの方向に向かって、ごうっという音を響かせながら地面に向かって落ちていった。そして次の瞬間、光りの塊が落ちたかと思う間もなく、それは激しい爆発の光りとなって僕の方に迫ってきた。
けたたましい爆発音が聞こえた直後、僕は眺めていた窓際から体ごと奥の壁に向かって吹き飛ばされた。
そのまま背中と頭を強打したかと思うと、意識がだんだん薄れていった。
痛みを感じる暇さえなかった。ただ、けたたましい爆発音だけが、やけに耳にこびりついていた。
その後のことは覚えていない。
気がついたら、僕は見知らぬ白い壁の建物の一室のベッドの上にいた。
そこで白衣を着た男性から、君は何日も眠っていてしばらく生死の境をさ迷ったのだと聞かされた。
その後のことは覚えていないと先程言ったが、それはどうやら間違いだった。
どうやらその前のことまで覚えていないらしいということがわかった。
つまり、僕は何者で、何故あの日ホームパーティーをしたのか、あの場に誰がいたのか、また、僕の住んでいた家はどこなのか。
それら一切のことが僕は思い出せずにいた。
また、あの日おそらく小規模の隕石の衝突だろうことが起こったことは確かだが、その事件や被害について誰も何も教えてはくれなかった。
しばらくをベッドの上で過ごし、検査と食事を繰り返していく内にだんだんと体力も回復してきた。
そうして、その建物にいる同世代の男女と仲良くなった。
皆同様に、記憶がなかったり、帰る場所がなかったりする人間ばかりだった。
そうして、知り合った数少ない仲間が出来たということで、ささやかながら親睦会をしようということになった。建物の一室を貸し切り、僕たちはテーブルに料理や飲み物などを仲良くなったメンバーで用意した。
また、仲良くなった一人が建物内の他の部屋からも同世代の男女を何人か連れてくるらしかった。
パーティーの時間になり、見知らぬ男女が数人部屋へやってきた。
パーティーはそれなりに盛り上がりはしたが、やはり皆建物の中で生活しているせいか話題は豊富ではないようだった。
パーティー中、ふと視線を感じ、その方向に目を向けると、一人の女の子がこちらを神妙な面持ちで見つめていた。
彼女は僕と目が合うと、なぜか戸惑ったように彼女の顔色が揺れた。
しばらく目が合ったまま見つめ合う形になった。
すると彼女は、「あの‥」と小さく呟いたが、僕はなぜ彼女がそんな表情をするのかさっぱりわからなかった。
そもそも彼女とは初対面のはずではないか。
僕が不思議そうに首を傾げると、彼女は何やらショックを受けたような表情になり、いきなりドアに向かって駆け出した。
僕は何がどうなっているのかわからず、ただ事態を飲み込めずに呆然としていると、「おい、追いかけなくていいのか。」と友人の一人が声を掛けてきた。
そう言われても‥と思いながら、もしかしたら彼女とは以前にどこかで会っているのかもしれないと思った。
いや、それどころか僕の過去について重大な何かを知っているのかもしれないぞと思った。
あの表情はただ事ではない何かを示していたように思えてくる。
僕はとにかく彼女を追いかけることにした。
建物の玄関口から扇状に広がる階段を駆け下りると、オレンジ色の街灯がところどころで灯り夜の街を浮かび上げていた。
大きな通りを中心に走り回り、続いて裏通りを走り回ったが、一向に彼女の姿は見当たらなかった。
一体、彼女はどこへ行ってしまったのか。
息が上がり、小さな公園のような場所までたどり着くと、たまらずベンチに座り込んでしまった。
その時、ポケットの中に固い感触があることに気づいた。
ポケットの中を探ると、はたして携帯電話が入っていた。
そういえば記憶を無くしたせいで携帯電話の存在をすっかり忘れていたのだった。
急に予感めいたものを感じ、携帯電話の電源を入れ、画像フォルダを開いた。
そこには僕ともう一人、先程の女の子が一緒に写っている写真が入っていた。
他の写真を調べると、それは一個や二個ではなかった。
たくさんのシチュエーションや背景をバックに、僕と件の女の子が二人で写っていた。
僕が画像を見て唖然としていると、そこに先程親睦会で一緒だった何人かの男女が追っかけてきた。
「携帯の中にこんな写真があったんだ」と僕は彼らに写真をいくつか見せた。
その時、物影からその女の子が俯きながら現れた。
そして、「わたし、あなたと付き合っているんです」と言った。
ーとまあ、そこで夢から覚めたわけだけど(笑)
おしまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます