第3話
いつか君が話していた事を、僕は思い出す。
「満足したら先にいくから」
死に損なった人間が言うような格好つけた言葉だと、思っていたけれど、どうやらそれは、格好だけでは無かったらしい。
自分の人生にケリを付ける覚悟が整ったなら、ぼくはそれでいいのだと思っている。僕は弱くなってしまったから、ズルズルその時が来るまで生きながらえるつもりでいる。多分、君みたいに綺麗に仕舞うようなことは出来ないだろう。満足なんて、それこそ一生できないだろうから。もちろん。君のことも、人生における不満足のひとつとして、抱えていくつもりだ。誰かを君の代わりにすることもしないし、君に執着するつもりもない。満足に少しづつ近づけるように、今日もまた、生活を一つ一つやっていくのだ。寂しさの埋め合わせなんて、自分一人でやっていくことなんだから。
ああ、でも、これまでのことで、悔やむことがあるとするならば、それは君といた5年間でその気持ちを変えることが出来なかったことだろうか。
僕は一人分の朝食を作って、テーブルの上に並べた。対面の、誰もいないダイニングチェア。僕はテーブルの上にシオンの束を置いた。
「いただきます」
僕は手を合わせて軽く頭を下げる、食前に祈るのは、君の決心が最後の最後まで崩れ落ちなかったかどうかの、それだけだった。
手を合わせて 現無しくり @Sikuri_Ututuna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます