第19話

「あーっ、もうっ! やるかもしれへんとは思とったけど、ホンマにドラゴン拾ってくるかぁ!? 何処で飼うねん、こんなデカブツ! エサ、どんだけ喰うんや!?」

「さすがはビート様! ドラゴンを手懐けるなんて、人類史に残る偉業ですわ!」

「……知ってた」

「ズルいわよビート、アタシにも一匹獲ってきて! いや、これから獲りに行くわよ!」


 単なる偵察のつもりが思わぬバトルになってしまって、予定よりかなり遅い帰還になってしまった。キャンプ地で待ってる皆は心配していたはず。

 その言い訳として下僕になったドラゴンを連れて帰ったら、軽い騒ぎになってしまった。そりゃそうだよな。ドラゴンだもん。


 ただし、その理由はそれぞれで違う。

 物陰で恐怖に震えているゴブリンたちは、これは普通の反応だろう。圧倒的捕食者であるドラゴンを前にしたら、逃げるか隠れるかするしかないのが普通。

 でも、うちの女性陣はちょっと違う。これまでに数々の修羅場をくぐってきているから、今更ちょっと強い飛びトカゲ程度では怖気づかない。

 キッカは飼育の大変さを想像して嘆いてるし、クリステラは単純に偉業を喜んでいる。

 デイジーは、どうやら【先読み】で予測済みだったらしい。その未来、俺にも教えておいてほしかったなぁ。まぁ、知ってても同じ結果だったとは思うけど。

 ジャスミン姉ちゃんは、自分も欲しいと駄々をこねている。いや、番のメスと子どもがいるはずだけど、増やさないからね?

 他の面々はというと、


「なぁ、あの豆を拾ってから、坊っちゃんの魔物拾い癖が酷くなってねぇか?」

「みゃ! このままだと魔物牧場ができてしまうみゃ!」

「あらあら、お世話が大変そうね。場所は何処にするのかしら?」


 まぁ、いつも通りだな。ドラゴン程度じゃ慌てない。

 ちなみにウーちゃんは、敵対の意志がないことを示して伏せているドラゴンの鼻面を前足でペシペシ叩いている。多分、自分のほうが上位者だという教育を施しているつもりなんだろう。強気だなぁ。でも可愛い。


「まぁまぁ。このドラゴンはペットにしたわけじゃないよ。行き違いがあってちょっと揉めたけど、ちゃんと和解したからね。この島で共存していくことにしたんだ」

「共存?」

「うん。争いにならないように、縄張りを決めて住む場所を分けようってね」


 ドラゴンがウンウンと首を縦に振っている。そしてウーちゃんがペシッと叩く。可愛い。


 この島は人工島らしく、上空から見た形状はほぼ円形だ。ところどころ、神様のおしおきで円形に欠けているけど。

 その中央には南北に山脈が走っていて、それを境にして気候が大きく変わっているらしい。西側は湿潤な密林地帯、東側はやや乾燥したサバンナ地帯なのだそうだ。ドラゴン情報。

 確かに、惑星の自転に従えば、気流は西から東へ流れているはず。山脈が南北に延びているなら、気流は山脈の西側に当たって雲になり雨を降らせ、東側へは乾いた空気が流れていくことになる。だから西側は湿潤、東側は乾燥するわけだな。

 多分、この島を作った古代魔法王国の人たちも、そういう意図で山脈を作ったんじゃないかな。雨を降らせて水資源の確保を容易にしようって。


 で、このドラゴン、巣穴を山脈の北東あたりに作っているらしい。そこが一番温度湿度地形の条件が良かったんだそうだ。

 ということで、この島を南北に分けて、北側をドラゴン、南側をボンちゃん率いるゴブリンたちの縄張りにしようということで話を纏めた。丁度いい感じに山脈の東西へ川が流れ出しているらしいので、そこを境界にしようってことにした。

 この島は北海道くらいの広さがあるから、半分でもドラゴンの親子一組くらいは養えるだろう。


「ええ、金輪際ビート様とボンちゃん様には決して逆らいませんので、どうかその条件でご容赦を」


 ドラゴンが伏せたままペコペコと頭を下げる。器用だな。

 まぁ、このドラゴンの攻略法は確立しているからな。俺がいなくてもボンちゃんだけで対応できる。

 実際あの後、試しにボンちゃんにもあの音バリアを突破してもらったし。

 いやぁ、エグい。ボンちゃんの飽和攻撃、エグいわ。アレ喰らって、ドラゴンは更に従順というか卑屈になった。さすがは大魔王、ヤバい。


『そんなわけだから、川の北にいる仲間がいたら、南に移住するように知らせてきてよ。住む場所はボンちゃんが作ってくれるから』

『わ、分かりました。ありがとうございます! これでドラゴンに怯えて生きていかなくて済みます!』


 ゴブリンたちに英語でそう伝えると、笑顔で何度も頭を下げながら、何人かが大急ぎで駆けていった。なんかほっこり。

 うーん、英語を喋っていると、ゴブリンでも知的に感じるな。いや、言葉を喋っているから印象が変わるのか。『ギャ』しか言わない向こうのゴブリンには嫌悪感しかないからな。


「おっ、今のサンキューベリーマッチだけは俺にも聞き取れたぞ! 他はやっぱり名古屋弁に聞こえるけど」


 名古屋弁だとどんな印象だろう? あんバター風味?



 うむ、これにて一件落着!

 って、俺の仕事はここからだけどな。これからこっちの世界での拠点作りをしなければいけないから。

 結構大きな町を作らなきゃいけないんだよな。

 俺の眷属が移住するだけなら大きめの集落程度でいいんだけど、一応支配下に置いた町や村の人たちも収容するとなると、多分五十万人規模の町が必要になる。

 五十万人ってどれくらいの町だ? 町田市くらい? だったら結構デカいよな。


 まぁ、土木工事なら慣れたものだ。伊達に【大工】技能スキルと【石工】技能は持ってない。世界一土木工事の得意な大魔王は俺だと自負している。あと女児パンツ作成。

 となれば、まずは土地の選定からだな。大きめの川の河口付近がいいよな。なんとなく。

 何処がいいかな? ドラゴンに飛んでもらって空から探すか?


「さて、それじゃ僕たちの仕事はここまでかな」


 とか考えてたら、ビートがそんなことを言い出した。


「おっ、もう帰るのか?」

「うん。いつまでも領地を空けておくわけにはいかないからね。領主はつらいよ。今夜はここに泊まって、明日の朝早く帰るつもり」


 むぅ、苦笑いに実感が伴ってるな。マジで帰らなきゃ不味いっぽい。

 そっか、そうだよな。こいつはここまで、単なる善意だけで付き合ってくれてたんだもんな。これ以上引き止めるわけにはいかない。もう十分過ぎるくらい助けてもらった。


「わかった。ここまで付き合ってくれてありがとうな! またいつでも遊びに来てくれよ。すぐにお前の町以上の大都市を作るからさ!」

「うん、僕も久しぶりに冒険ができて楽しかったよ。この島にもまた来るから」

「おう、その時を楽しみにしておくぜ!」


 なんて話をして。

 その夜は周辺で狩った魔物や魚を料理して食べて。

 翌朝、飛行機っぽいのに乗ってビートたちは島を出ていった。

 俺とロキシー、ゴブリンたちは手を振って見送った。

 またな!



「おかえりー、遅かったじゃん?」

「ただいまー……って、なんでいるのボンちゃん!?」


 ドルトンの街に帰ると、屋敷の庭でボンちゃんがタロに齧られていた。なんで!?


「ああ、こっちの屋敷に俺の眷属のネコ麦とジャガイモを置いてただろ? アレって俺の意識を移せるんだよね。で、【時空間魔法】で予備の分身を呼び出してここに置いておいたってわけさ。ああ、ちゃんと島にも俺の分身は居るから。ロキシーは元の世界に返したけどな」


 なんというデタラメ! そこそこ後ろ髪引かれる思いで別れてきたのに!

 っていうか、そんな魔法があるなら俺たちもすぐ帰ってこれたんじゃん!

 これが大魔王か! あっちの世界の人たちに同情してしまうな!


「というわけで、もうしばらくこっちに居ることにしたから。よろしくな!」

「あぁ〜、うん、よろしくぅ〜?」


 なんか、超気が抜けた。なんだかなぁ。


 そんなわけで、今も時々、うちのペットたちは喋る大きな豆を齧っています。


 第一章 了


――――


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【セルフクロスオーバー】俺、冒険者✕草転生 みそたくあん @misotakuan

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