3/12:唯そこには、諸行無常の響きあり

3/11

午前の出来事

・ふふ、中学の時の友達たちと5人(1人熱が出たので会えませんでした……残念)でまねき(カラオケの方)に行ってきました。うわぁ……懐かしい。けど中学の時はカラオケなんて行っていなかったからどこか斬新というか、皆変わっちゃったんだなぁというか。ま、楽しかったです。


午後の出来事

・みんなでそのまま銭湯へ。1人は歩き疲れて寝ころび庵で寝てしまい、残りの4人で坑道を繋いでいくゲームをしました(説明できるほどルールを読み込んだわけじゃないけれども、小学生みたいな説明だなぁ)。まぁ、そんな事よりもみんなでカードゲームをしたっていう思い出の方が断然大事なので別にいーんですけれども、やぁ、昼夜問わず楽しいものは楽しいのでしょうがないですよね。


3/12

午前の出来事

・寝てました。映像授業を受けてました。……以上ですぅ。


午後の出来事

・うーん、有意義な時間ってなんでしたっけ。前にも書いた気がしますけれども、私はいたって普通の現金な人間だからか、幸せの後は苦しまなくては気が休まらないらしくてですねぇ。ぁ”~っ、ヨムヨムするなりカクカクするなり、課題やるなりネタを仕入れるなり……どれもを有意義なものに感じられなかった私は、分かった。木偶の坊だ。


<唯そこには、諸行無常の響きあり>

 8時50分、駅近くのセブンイレブンで。

 約束通りについたつもりだったけれど、私を出迎えたのはLINEからのコール音。

 応答ボタンを押すや否や、もしもしの一言すら置き去って電話の主は話し始める。


「どこにいる?」

「約束のセブンイレブン」

「え、いないんだけど」

「え?」

「薬屋見える? または病院」

「病院の看板なら見える、1.3Km先だって」

「……おい」


 どうやら私はセブンイレブンを間違えたらしい。

 電車の時間は9時10分と少ししたら。あと10分はあるから駅集合なら間に合いはするだろう。


「とりあえず駅に行って」

「了解」


 電話を切ると同時、私は自転車に脚をかけてこぎ出した。


◇◆◇


 9時5分。電車発進まで5分と少し。

 私は駐輪場に自転車を停めていた。


「なあ」


 私と一緒に駐輪場へ入ってきた60を少し超えたくらいの白髪交じりのお爺さんが、振り返りざま急に私に話しかけてきた。

 何かしてしまったのだろうか、お爺さんの自転車にぶつけないように一応配慮していたはずなんだけれども。


「最近ここ空いてるな」


 ……はぁ。私の口から思わず生返事が漏れると同時、肩の力がふっと抜けていく。曇り空にしては、清々しい朝だ。お互い楽しんで行きましょう、人生の先輩さん。


「ここ最近入試休みだからですかね、私も今から友達とちょっと遊びに行ってくるんです」


 ああ、そういうことか。なるほどね。そう言うとお爺さんは納得したような顔で改札口の方へ歩いて行った。

 私はお爺さんの背を見送ると改札口の前を通り抜けて、スマホを取り出す。


『モニュメント下にいるから』


 さあ、久々の再開Part1と行こうじゃないか。


◇◆◇


『何号車に乗った?』

『そっちの方が先に電車に乗るでしょ』


 友人Nから来たLINEに思わず突っ込むと、肯定か気恥ずかしさか、返信は来なくなりスマホが黙りこくる。


「とりあえず、先頭車両に乗っておく?」

「んー」


 あ、レアカードきちゃあ。久々に会った二人は、元テニス部、現科学部の数学好きの友人Iとまだテニスを頑張ってるハイスペック高身長こと友人Mは、後ろで私の問いかけを軽くいなしてポケポケに熱中している。

 ……いーけどもさ。どこか一人仲間外れになっているようで寂しくて、まだ電車の到着2分もあるけど声をかけてみる。


「電車来るよ」

「ん、了解」


 すると案外、友人Mはスマホをポケットにしまうと、線路の方をきょろきょろと覗きだした。

 本当、大きくなったよな。何か話しかけようと横に並んだ刹那、再開第一声で思わず口走ったその感想がもう一度頭をよぎる。ちなみにそれは友人Iの方も感じていたらしく、ほんとにな! とはしゃいでいたけれど、そんなことはさておいて。


「今日、楽しみだね」


 高校、何してるの? なんていう無粋な質問にしたくなかったから曖昧な言葉でお茶を濁したけれど、これも大概か。

 でも、


「うん」

「まーなー」


 2人そろってそう言ってもらえるとプランを練った私だって少しは誇らしく、こそばゆくもなるもので。

 友人Iが始めて、私が繋いで、みんなが乗ってくれた。折角なら、記憶に残る一日にしたいものだ。


 ~~♪


 電車が到着を知らせる音楽がホームに響き、私の胸は期待に高鳴る。


「あ、いた!」


 相変わらずの寝ぐせのついたもじゃもじゃ頭が目に留まって、思わず隣のMを引っ張って最後尾の列車に乗り込む。


 9時13分。私たちの1日の始まりを告げる号砲がぷしゅっと響いた。


◇◆◇


 9時25分。練習試合でも降りた目的地にほど近い駅にみんなで降り立つ。


「カラオケってどこで?」

「大体北の方」

「北ってどっち?」

「ん-、あっち?」


 もー、俺調べるから。友人Iが全員を先導するように前を、と思った次の瞬間にはもう彼はポ〇モンGOを開いていた。


「……とりあえず行くか?」


 いつの間にか隣にいた友人Tが私に声をかけてきていて、他の人にも声をかけようとそのまま後ろを振り返ってみれば、友人Mは友人Iとの会話に熱中しているし、友人Nは誰かに先導される気満々なオーラを全身から醸し出していたのが分かった。


「まぁ、そうだね」


 はぁ。と私たちは苦笑いがてらため息をつきあって、Tの開いたgoogleマップを頼りにゆっくりと歩き出した。


◇◆◇


 9時45分。

「……年齢証明できるものって何がある?」


 カラオケについた私たちは、必死に頭を捻らせていた。

 カラオケの高校生サービスを受ける予定でこのお店に来たのだけれども、このお店に来たこと自体ほとんどの人が初めてで会員登録が必要で、お店の人が言うには年齢を証明するものがそれには必要なのだという。

 まあ、高校生じゃない人に嘘つかれちゃったらお店としても困るから当たり前と言えば当り前なんだけれど、考えの浅い私と友人Iで組んだこのプランには身分証明書なんて持ち物リストに入れていなくて、案の定私たちは友人Iが高校生であることを証明できないばっかりに受付で横着していて。


「定期は?」

「無い」

「デジタル学生証」

「そんなのあるの?」

「校章か何か」

「持っている訳がねー……」


 ……身分を証明できるもの、他に何があったっけなぁ。

 そんなことをしていると入店してから気づけば10分が経っていて、次々とお客さんは入ってきていて。すると、一緒に考えてくていたお店の人が何かをひらめいた顔で口を開いた。


「学校のアプリってなにかありますか?」

「Teams開こう、Teamsを」

 友人Tがすかさず合の手を入れる。

「マイクロソフトのアカウントのパスワード分からんから、スマホじゃ入れない」

 でも、まだだ。

「Classroomは?」

「無理……だけど、塾のならいけるかも」

 友人Iの顔がぱっと晴れる。

「いけます!」

 お店の人の声もどこか弾んでいた。


 そうしてようやく私たちは念願のカラオケルームの案内表をもらうことができた。


 ここで10時、次集まるときには身分証明書を持ち物リストに入れておこうと胸に刻んでおいた。


◇◆◇


 12時30分。カラオケを出た私たちは併設されたゲームセンターに足を運ぶ。中学生みたいな遠足プランだと思われるかもしれないけれど、残念ながらこれは即興で、この想定外も醍醐味だと思ってみんな乗り気になっちゃったのだから反対意見なんてでるはずもなく。


 この日は入試休みだということも相まって、ゲームセンターは実質貸し切り状態だった。


 あはは。


 みんなの口からどこか乾いた笑い声が漏れる。

 当り前だけれどもここにいるのはみんな高校生で、だけどみんな校則か部活でバイトなんてやっていないからお金もそう潤沢ではなくて。

 つまりはそうやることもなくて。


 結局私たちは食前の腹ごなしにそのだだっ広いクレーンゲームの間の通路を縦横無尽に歩き回りながら、景品を肴にしながら笑い話に花を咲かせて時間を潰して。


 そうして13時。景品を見るのにも飽きてきて店を出た私たちのお腹はもうすでにペコペコになっていた。


◇◆◇


 13時と少しして。私たちはアミューズメント複合センター、もといラ〇ンドワンに歩いていた。

 というのも、お昼ご飯にした牛丼屋で「これからどうしようか」っていう話が出て、そこでボウリングか卓球にしようっていうことになったから。ちなみにもうすでに事前プランなんて始まりと終わりの電車の目安程度のものになっていたけれども、そんなことを気にしたら負けみたいなものだ。友達との遊びは即興性が醍醐味なんだから。


「ボウリング、68分待ちだってさ」

「本当に?」

「ここ書いてある」


 いざ着いてみたラ〇ウンドワンは、さっきまでいたゲームセンターの人を丸ごと吸い取っているかのように人であふれかえっていて、その待ち時間は予想以上のものだった。


「どうする?」

「卓球でいいんじゃない?」

「卓球はね……お、待ち時間無いよ」

「じゃあいいんじゃない?」


 さて、ここには現テニス部の友人MとNがいる。一体全体、どうすれば相手になるのだろう。そんなことを考えながら、私は料金精算機の列に並んだ。


◇◆◇


「とおっ」


 そんな掛け声とともに鋭いピン球がコートの端に鋭く刺さる。流石はテニス部というか、MとNの試合は見ている側も楽しかった。

 右に、左に、友人Mはその長い腕を生かして振っていくのに対して、友人Nは機敏な動きでそれらを返球していく。

 どこか懐かしい、そして既視感のある光景だった。

 私はサーブにドライブをかけて相手の意表を突くのはそれなりに得意だけど、ド正面の返球は苦手で、友人Iはどこかから仕入れてきた情報をもとに偉ぶってどこか凄そうなテクニックを披露していくけれど得失点するたびにオーバーなリアクションをしちゃうから波に乗るのが苦手で、友人Tはエンジンがかかるのは遅いけれど正攻法に順応するのが速くて。


 途中、友人Nの現在のライバルたちとたまたま会って、隣からもガヤを入れられてにぎやかになったことも相まってか、どんどん体が温まっていく感じがした。


「いや~、暑い」

「楽しかったね」

「ほんまそれよ」


 わいわい、がやがや。空は暑いという言葉を聞き取ったからか、ぱらぱらと雨をふらせてくれた。


◇◆◇


「じゃ、後はリラックスするだけだね」

 14時50分。ラウンド〇ンからずっと歩いて銭湯についた私たちは肩の力を抜いて顔を見合わせた。

 途中でTは寝ころび庵で寝てしまったり、友人Iがお風呂に入りたくなったからと言ってタオルセットを借りに行ったり、寝てしまった友人Tを置いておいて4人でカードゲームをしたり。

 飽きたらお風呂に行って、次はUNOをして。


 そうして最後にご飯をみんなで食べるまで、本当に一瞬だった。


◇◆◇


 19時52分。お別れの時。

 帰り道の電車は、みんな静かだった。

 

「また集まりましょ」

「ん」


 一駅先まで乗っていく二人と別れ際、またがあることを認めてくれただけなのに、胸があったかくなる私がいた。


◆◇◆◇◆


 とっても楽しかった。それは、とっても。だけれども、こうやって俯瞰してみると見えてくるものだって、たくさんある。

 例えば、

 友人Iはうるさくて、時々暴走するくせにほとんど学ばないはそのままで、ずかずかと新しい事格上に堂々と挑む行動力を持つようになっていた。

 友人Mはただでさえ文武両道だったっていうのにいわゆるトップ校でその知的ぶりが一層洗礼されているかのようだった。

 友人Nは人好きのするえくぼの凹んだその笑みで、あの時のまま相変わらず私を魅了してくる上に、部活動で先輩からの期待で押しつぶされそうだとさらりと言ってのけて笑って。

 友人Tは……まあ、相変わらず? と言ってもそれなりに頻繁に会っているから変化をあんまり感じていないだけかもしれないけれども。


 諸行無常の響きあり、なんて本当によく言うけれど。電車の中でみんな弄り出すスマートフォンに私の心は少し抉れて、確かに他のみんなが着実に進んでいるのを見てどこか羨んで。


 この上ないほどに幸せな一日に、過去の輝いた一日を重ねて、日常の中に諸行無常を感じた、そんな一日。

 明日はどんな日になるのかな、でもとりあえず今日は、おやすみなさい。

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