第11話 第三試合 其の壱
〈ローズ視点〉
「それまで!」
ビビーッと、三分間の試合経過を告げる
(……いったい、どういうつもりだ?)
額から汗を垂らしつつ、
彼岸花のような赤髪を掻き上げて。
彼が覚えた違和感を、
観客たちも感じているようだ。
「……おいおい。何だよあれ」
「あの子けっきょく、一度も
「そりゃあの
「減点怖くないのかな?」
「もう試合を諦めたんじゃね?」
「あーあ、つまんねーの」
『……はい、というわけで結野高校の
『一見すると、悪手ですね。たしかに実力差がある相手に不用意な
ひと試合における
ポイントは減算式であり、選手が最初に保有する十点から、
攻防を入れ替えた3ターン1セット形式の試合が終わる前に、この保有点が無くなった場合は、その時点で失格。
また保有点は選手が勝ち抜いても、その試合での残りポイントが次回に持ち越されるため、とにかく選手はこの保有点に気を配った
初心者でもわかる基礎知識だ。
であるというのに結野高校の中堅は、自らの
当然ながらそのプレーは審判員に消極的と判断されて、彼の保有点は十点から九点に減らされている。
減点を覚悟したうえで、そうしたプレーを行う選手の思考は、大きく分けて二パターン。
ひとつは彼我の力量差に心が折れて、
試合を放棄している場合。
そしてもうひとつは――
(――何か、狙いがあるのか?)
ローズの懸念を、解説のプロ
『……ですが彼の目は、死んでいません。今のターン中、彼は
『なるほど! つまり盾永選手は
統計的に
どうやら金髪の少年は後者のようだ。
ローズは攻守交代のため、こちらに背を向けた少年の、白い
(……小柄で肉付きの薄い体つきだが、尻肉だけは厚みがあるな。とはいえあの程度の肉量でこちらの
重量感のある尻肉は、ときに
当然ながら臀部の総質量が大きければ、それだけ攻守における全身の負担も増大するため、一概に大きければいいというものでもないが、それを加味しても一般的に肉付きのいい尻とは、優秀な
その点においては、結野高校の中堅は体格の割には恵まれているものの、それに頼った防御型ではなく、身軽さを活かした速度型というのが、数多の戦歴を有するローズの見立てであった。
(……愚かな。貴様の狙いは、浅はかに過ぎる!)
そして先の一戦でも見せたように。
高速機動を得意とするローズにとって、そうした速度型の選手とは、相性の良い
(いいだろう、貴様のその蒙昧なる幻想を、某が打ち砕いてくれようぞ!)
金髪の少年も腰を落としながら両手を頭の後ろに組み、
「……ぬっ!」
次の瞬間。
糸目を見開くローズの眼前で、
対戦相手の上半身が、
消えた。
【作者の呟き】
さて、解説回終了。
ギアをあげていきますよー。
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