第13夜
赤い布が風で飛ばされ、覆っていた顔が月に照らされた。
「なんで、なんであなたがこんな事を・・・充江さん!」
千秋が血で濡れた刃を着物で拭いている充江に訴える様に叫んだ。
充江はその言葉に特に動じる事無く、目を閉じて動かなくなった穂波を見つめた。
「その子は私と同じだって思っていたのに。やっぱり・・・心が優しいのね。好きな人を殺してでも一緒になりたいって言っていたのに。」
「なんであなたが穂波さんと?面識はないはず。」
「私はずっと義美を愛してきた。だから、義美が最近私に冷たくなって、よく出かけているのも知っていた。あなたを追って出ている事もすぐに分かった。それであの子の団子屋も見つけたの。」
「それで穂波さんが小梅の事を好きだって事を利用して・・・。」
「どうしても見捨てられなかった。私と同じ悲しい様な、それでも好きな人の傍に居れて嬉しいような・・・そんな複雑な顔をしているのが見えたの。」
「穂波、ごめんね。私、気付いてあげられなくて・・・ごめんね。」
「小梅・・・。」
泣きながら穂波の遺体を抱きしめる小梅を見て、千秋は充江を睨みつけながら、2人の前に庇うように立った。
「狙いは私でしょう?私が居なくなれば、充江さんは義美さんと結ばれる。小梅にはあなたが紅一夜だとは話さないようにさせればいい。」
「・・・千秋、何言ってるの?千秋も死んだら私は生きていけないよ!」
「小梅・・・。」
「紅一夜さん、千秋を殺すなら私も殺して!もうこれ以上大切な人を失いたくないの!」
泣きながら懇願する小梅を見つめ、充江は息をついた。
「・・・もう、私も誰かの大切な人を殺したくないわ。」
「え?」
充江の瞳から涙が零れた。
「私もあの子と一緒。結ばれないはずの赤い糸を必死に結ぼうとしてる。わたしは違う色の糸なのに。」
「充江さん・・・。」
「私の大切な人が違う人だったらいいのに。人を殺さなくても結ばれる人生になりたかった。」
「残念ね。あと少しだったのに。」
充江の後ろから声がしたと同時に充江の胸を鋭い刃が貫いた。
充江は倒れ込むと同時に後ろにいた何かに抱きしめられ、力無く目を見上げると驚いた目をし、呟いた。
「・・・義美。」
悲しげな顔をした義美が充江を見つめていた。
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