第11夜

その時間は、長く、永遠に続けば良いのにと小梅は思ってしまった。

そっと唇が離れると、小梅はうっとりとした顔で千秋を見つめた。

その顔を見て千秋はくすっと笑みをこぼした。

「小梅が居てくれたから、私はここまで頑張ってこれた。私が小さい頃両親を亡くした時も、私より泣いてくれた。初めて舞妓としてお客がついた時も、私より喜んでくれた。それから私は小梅を大切に思ってる。」

千秋がそう話すと、小梅の目からは涙がこぼれた。

「私も千秋のこと大切に思ってる。だから、千秋に何かあったら私は・・・。」

小梅は自分から、千秋の唇を奪っていた。

驚いたように千秋は目を大きくさせたが、小梅は直ぐに唇を離した。

「私、千秋とずっと一緒にいたい。」

「私もずっと傍に居たい。やっと自分の気持ちに気付いたんだ。だから、私は・・・舞妓辞めようと思う。」

「え!そんな・・・!」

「舞妓は自分も好きで始めたけど、両親を亡くした私を拾ってくれたお登勢さんに恩があった。でもお登勢さんも言ってくれたんだ。もうそのしがらみに縛られなくていい。自分のしたい事をしていいって。」

「千秋・・・・。」

千秋は小梅の手を握り、じっと見つめた。

「私は小梅が居れば、他に何もいらない。だから、もう少し待って欲しい。紅一夜が捕まりさえすれば。」

「・・・私も、千秋傍に居てくれればいい。」

小梅の言葉に千秋は笑みを浮かべ、抱きしめた。

「千秋、最近表情柔らかくなったね。」

「そうかな。それなら、小梅のおかげかな。」


「・・・・。」

幸せそうに体を寄せ合う二人を見て、悲しげにその場を誰かが居なくなったのを、二人は知る由もなかった。



「最近、小梅嬉しそうだな。」

「ひぇ!そんな事ないよ!やだなあ、父さん。」

ニヤニヤしている善三に恥ずかしそうに小梅はお盆で顔を隠した。

「千秋に会えなくてしょげてると思ってたんだがな。良かった。紅一夜も最近すっかり聞かなくなったしな。」

「そう、だね・・・・。」

小梅は紅一夜の事を口にされて、少し複雑な気持ちになっていた。

紅一夜はあれから姿を現さず、人々からもあまり聞かなくなった。

だが、小梅は思っていた。

紅一夜がまだ存在しているという事は、紅一夜が捕まらない限り小梅と千秋は一緒に居られないと意味になってしまう。

「小梅。」

一体どうしたらいいものか、と小梅が考えていると後ろから声をかけられた。

振り向くとそこには、少し笑みを浮かべている穂波が立っていた。

「びっくりした・・・どうしたの?」

「今日の夜、ちょっと散歩でもしない?」

「良いけど・・・。」

「じゃあ、決まり。」

いつもよらら元気のない穂波は盆に団子を乗せると、注文した席に持っていった。

「穂波・・・どうしたんだろう。」

小梅は首を傾げつつ、洗い場に足を進めた。












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