第4夜
2人はいつも一緒だった。
嬉しそうに千秋の手を取る小梅を、戸惑いながらも少し嬉しそうに手を握りかす千秋。
このまま二人は一緒に居るものだと思っていた。
「ねえ、なんで!なんで千秋ちゃん寺子屋に来なくなったの?」
小梅は父さんの善三に聞くと、苦い顔をしていたのを覚えている。
小梅は千秋に会えたのは、千秋が舞妓になってからだった。
小梅の姿を見つけた時の千秋は、昔と変わらない優しい笑みを浮かべていた。
小梅はそこで千秋に特別な感情を抱いて居ることを知った。
紅一夜に刃を振り下ろされた時、千秋の顔が浮かび、思った。
「千秋に大好きだよって、伝えればよかった・・・。」
「小梅!」
はっと目を覚ますと、そこには涙を浮かべた穂波と心配そうな善三が小梅を見つめていた。
「父・・さん、穂波、ちゃん・・・?」
「ったく、心配かけやがって。」
善三は小梅のおでこの汗を拭ってやると、その手ぬぐいで自分の涙を拭った。
「私生きてる・・・。」
「奇跡的に喉元じゃなくて肩に刃が当たったみたい。本当に良かった・・・!」
穂波はボロボロと涙を溢し、震える手で小梅の手を取った。
ぼーっとする頭の中、ふと襲われた後の事を思い出した。
「千秋・・・。」
「え?」
「襲われた後に千秋に抱き抱えられた気がしたの。千秋は?」
小梅の問いに穂波は少し不機嫌そうに答えた。
「ビックリしましたよ。あの千秋さんが着物も血まみれにさせて、小梅を抱き抱えて団子屋駆け込んできたから。そこから2日間眠り続けてたんだよ?」
「2日間も・・・。」
「とりあえず、岡っ引きに話してこないとな。明日の昼には来てもらおう。ちょっくら話してくるから、穂波ちゃんお願い出来るか。」
「はい。お気をつけて。」
善三は慌てて部屋を出ていくと、泣いている穂波の方を向いた。
「穂波ちゃん、お店忙しくさせてごめんね。」
「そんなことより自分を気にしてよ!あの夜だってあんなに一緒に行くって言ったのに、ちょっとそこまでだからって、私がどれだけ後悔したか・・・!」
「穂波ちゃん、本当に・・ごめんね。」
小梅はポロポロと泣きじゃくる穂波の手を優しく握り返した。
「謝らないでよ。でも、本当に良かった。私、小梅が居なくなったら・・。」
「穂波ちゃん?」
穂波は小梅の頬に優しく触れた。
「今は何も考えず、ゆっくり休んで。お水持ってくるわ。」
何か言いかけた言葉を止め、穂波は立ち上がり、戸の近くまで行くとチラッと小梅を見つめた。
「なんて助けたのが、私じゃなかったんだろう・・・。」
小梅が聞こえないくらいの声で呟き、穂波は部屋を出ていった。
「穂波ちゃん?」
小梅は頭がボーッとしていて、何を言ったのか分からず、瞳を閉じた。
あの夜の事を小梅を思い出していた。
急に何かにぶつかり、自分の不注意だと謝ったが、変な雰囲気を感じた。
ふと頭を上げるとそこには黒の着物に真っ赤な手ぬぐいで顔を覆った人が立っていたのを覚えている。
なんで私が紅一夜に?と回らない頭で考えていると、戸が開いた。
「穂波ちゃん、ありがとう」
穂波が水を持ってきてくれたと思い、小梅が目を向けると、そこには違う姿があった。
「千秋・・・。」
そこには千秋が心配そうに立っていた。
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