第14話 思いが通じ合う
団長の胸に顔を押し付けるように埋めた。
団長のシャツを私の涙で濡らしてしまった。
それを責めることも非難することもなく、ただ優しく寄り添ってくれる。
団長に優しく背中を撫でられ、子供をあやすようにポンポンとされると・・
心が安らぎ、もっと甘えたくなってしまう。
囲われた腕の中の居心地が良すぎて、『もっと』『もっと』と思ってしまう。
ああ、ほんと私らしくない。
なんてことだろう。
人前で泣くなんて、それも大泣きするなんて・・日本で生活していた頃はなかった。
徐々に膨らみ大きくなっていく私のバスト・・・それに向けられる視線・・・
そんな視線を他人から向けられていることを親には絶対に知られたくなくて、泣きたいぐらい嫌でも・・気づいていないふりをした。高校生、大学生そして社会人と大人になっていけばいくほど、嫌なことは心の中に隠してきた。心の中が嫌なことで溢れ出しそうな時は、友人に愚痴った。でも、どんなに仲の良い友人であったとしても・・・涙を見せたことはなかった。
それなのに、この世界に来てから間もないと言うのに、何度も泣いている・・・それも子供のように泣きじゃくってしまったし・・・今さっきも・・・ああ、考えると頭が痛い。
この世界に来て見つけてしまったお菓子(甘い)の家(檻)、
優しく抱きしめとことん甘やかしてくれる人の腕の中は甘美な檻のようだ。
檻に囚われれば、最後・・デロデロに甘やかされ・・・ペロリと食べられる。
居心地の良い団長の腕の中、そんな童話もあったな・・・と思い出す。
筋肉って意外と柔らかい。
わけもわからず溢れ出した涙は、徐々に収まり、
団長に優しく背中を撫でられながら、
私は、目の前の筋肉を堪能しようとしている。
涙が収まり気持ちが落ち着く・・目の前に(鍛えられた)大胸筋・・・
おっぱいがあった。
そんな立派なおっぱいをみたら、いつも私の愚痴に付き合ってくれた筋肉フェチの友人を思い出した。
友人は筋肉大好きで、いつも筋肉について熱く語っていた。
そんな彼女がお酒を飲んだ時に必ず飛び出す単語それが
『雄っぱい(おっぱい)』だった。
筋肉フェチの彼女を思い出してしまうほど、見事な胸(雄っぱい)だった。
この素晴らしい大胸筋(雄っぱい)を前にして、
興味を持つのは自然の流れだと思う。
シャツの上から恐る恐る触れてみれば、弾力があるのがわかる。
弾力があるとわかれば、肌触りを知りたくなるのは・・しかたない。
この見事な大胸筋の持ち主と自分の現状をうっかり忘れてしまった私は、
素晴らしいであろう大胸筋を覆う布(シャツ)を捲り上げた。
現れたのは思っていた以上の大胸筋!
手触りは、しっとりとして滑らかで手に吸い付くよう・・・
そんな大胸筋に引き寄せられるように顔を埋める。
ああっ・・・いい!!
感動しながら息をつく・・・・最高!!
さらに大胸筋の膨らみに指を這わす・・・弾力があるのに柔らかい・・??
筋肉ってもっと固いものだと思っていた私は、確認のため大胸筋を手のひら全体で揉んでみる・・・やっぱり柔らかい。
これは堪能すべきだと本能のままに、大胸筋に顔を埋めたら、
「・・・っっは。くすぐったい」
色気を感じさせるバリトンボイスが降ってきた。
声のした方へ視線を移せば、優しく私を見ている団長と視線があった。
「涙はとまったようだが・・・落ちついたか?」
うっ・・・ああっ・・途端に現状を思い出した!
「は・・・はい。落ち着きました。また、泣いてしまって、本当にごめんなさい」
「気にするな。さっきも言ったが、俺はミサキの泣いている姿も笑っている時と同じくらい好きだ!」
「それに、俺への気持ちを伝えてくれた君を抱きしめていられた。役得だった」
甘いっ!!!
団長の甘さはさらに加速していた。
団長がフェロモン製造機となっている!!
「ミサキ、ちゃんと座ろっか?」
そう言われ、団長が私を座ったまま軽々と持ち上げ、団長の膝にまたがるような体勢で座らせた。
きゃ〜〜〜〜、団長の顔が近い!!
それに、私のお尻が団長の逞しい腿に触れている〜〜〜。
もう、大パニック!!
そんな私を団長は楽しそうに見ている。
そんな大パニックな私だったが・・・落ち着いてきた。
時間の経過とともに慣れてきた・・・慣れとは恐ろしいものである。
人間慣れれば、別に興味を持つ生き物である。
団長の膝&太ももにお尻を置いた状態で、団長をあらためて見る。
団長の男らしい顔を支えるのは、首を支える太い僧帽筋、肩には見事なまでに存在を示す三角筋、そして胸には先ほどの雄っぱい・・もとい大胸筋、そして腹筋。腹筋も間違いなく綺麗に割れていると思う。
で・・・・私がお尻を置いているのが、大腿四頭筋。
おお〜っ(頭の中で拍手!!)
すごい、ほぼ完璧に筋肉の名前がわかった!
(友よ〜筋肉フェチの君の教えが身を結んだ!)
ほんと、どうでもいいこと思いながら・・・お尻の位置ずらす。
お尻を置いている場所がゴツゴツしてなんとなく座り心地が悪い。
「ミサキ、どうした?」
そう言いながら団長が私の顎を指先で持ち上げる。
これは・・・壁ドンならぬ「顎クイッ」では?
これは・・すごい・・・でも今はそれどころではない!!
「ミサキ、目元が赤い・・・痛くないか?」そう言いながら、
団長の指先が目元から頬をゆっくりと行ったり来たりを繰り返す。
団長の少しささくれだった指先がくすぐったい。
抗議の声をあげようと団長に視線を向ける。
愛おしそうに私の目元を指先で撫でるようになぞっている。
その微笑みは優しさの中に甘さを含んでいて、胸がキュッと締めつけられる・・・
ドキドキして苦しい。
団長が素敵すぎて・・・
こんなにかっこよくて優しい・・素敵な男性が私を好きになってくれるなんて・・・
奇跡だと思う。
だから、聞きたいと思った。
私のコンプレックスである胸をどう思うのかを・・・。
「団長は、私のこの・・・胸どう思いますか?いやじゃないですか?」
両手で胸を持ち上げながら聞く。
突然の私の質問に驚いた様子だったが、
「???」
「なにか問題があるのか?もちろん、大きいとは思うが・・・」
「妊婦さんに間違えられたりするんですよ?」
若干膝立ちになって、団長の顔の前に胸を突き出すようにして尋ねる。
「・・・・」
沈黙のあと、
「ミサキ、触れてもいいだろうか。君が俺の胸にしたように」
えっ・・・と・・団長の胸に何かしただろうか??(思い出せない)
私が返事をしなかったことを肯定ととらえたのか、
団長はゆっくりと私が突き出した胸に顔を埋めた・・・・
団長の動きはゆっくりで、拒絶することは容易かった。
でも、私はしなかった。
私は団長が好きだ。
だから、このコンプレックスである胸も一緒に好きでいてほしい。
はじめて、コンプレックスごと愛されたいと望んだ瞬間だった。
しばらく私の胸に顔を埋めた団長は、触れた時よりもゆっくりと顔を上げ、
「あたたかくて、優しい・・・柔らかな、ミサキらしい素敵なバストだと思うよ」
団長の言葉からは、いやらしさも卑猥さもなく、誠実さを感じる言葉が紡がれた。
団長の言葉は素直に嬉しかった。
それなのに・・・・口から出る言葉は捻くれた可愛くない言葉。
「でも、団長、この世界は妊婦さん授乳婦さんしかバストが大きくないんでしょ?
だから・・・私と一緒にいる団長は嫌じゃないか?・・って思って。本当に・・・申し訳なくって・・・」
そんな私に団長はフッと微笑む。
「ああ、ここでは、女性の胸が成長するのは、妊婦や授乳婦だ。だが、ここでも例外はある。確かに君ほどではないが・・・・。それに、バストが大きいイコール嫌っているのではない。むしろ、『神聖な時間』と捉えられている。それに・・・その期間の・・・その・・・・」
最後の方は、団長が何を話してくれたのか聞き取れなかった・・・。
嫌われていないことが素直に嬉しい!!
冷静になると・・・自分のしてしまった行いが・・・恥ずかしい!!
団長に胸を晒す・・・その上・・・・ああっ!!(馬鹿!!)
まさに痴女では???
こんなはずではなかったのに・・・
しばしの沈黙・・・(私は反省中)
沈黙を破ったのは団長だった。
「なあ、ミサキ。これからは、俺のことを・・その・・・名前で呼んでくれないだろうか?」
団長からのお願いだった。
このやらかした状態にして・・・このお願いって・・・ピュアすぎる!!
でも、この団長のピュアさに乗っかる私。
「えっと・・・レオナルド様・・・ですか?」
「いや、ミサキ・・『様』は不要だ」
いやいやいや・・・・でも、団長は上司だから・・・それはマズイ!
「でも、団長・・・その、仕事上は上司なので・・・」
と伝える。
少し考えた様子の団長は、
「二人の時は『レオ』と呼んでくれ」
そんな少し拗ねた様子の団長・・・じゃなくてレオが可愛くて
ちょっとだけ笑ってしまった。
そんな私をレオは抱きしめ、急に始まった甘い雰囲気に動揺する私の額に
ちゅっ・・・・ちゅっ・・・キス・・優しく啄むような口付けをしてくる。
恋愛から遠ざかっていた私には、刺激が強すぎて体が強張ってしまう。
「だ・・・団長・・・」
「ミサキ、名前を」
「レオ・・」
私が名前を呼ぶと蕩けるような笑みをくれる。
カッコよさにエロさが加わり大変なことになっている。
どうしよう・・・
こんな時私はどうしたら・・・・
「レオ・・・・あっ・・」
私が話出す前に引寄せられる。
耳元で団長の息遣いがする。
団長の吐いた息が私の耳に触れた瞬間
「ヒャンっ!!」
変な声が漏れてしまった。
いつの間にかガッチリと腰を抱えられ身動きがとれない私の耳を団長が丸ごと頬張る。
驚きで固まる私の耳を団長の舌が輪郭を確かめるようにゆっくりとなぞるように舐める。
ゾワッとした初めての感覚・・・下腹部が熱くなるのを感じ、とっさに団長の太く逞しい首に両腕で抱きついた。
そんな私の頭を団長の手が支える。
団長と私の体が密着する。
目の前に大好きな団長の顔。
大好きな人に抱きしめられ、甘く優しく見つめられる。
こんな幸せな時間が自分に訪れるなんて・・・・嬉しくて、
嬉しすぎて・・・また視界がぼやける。
「そんな、可愛い顔で泣くな。どれだけ俺を煽るつもりだ」
「泣いてなんて・・」
「煽ってなん・・・・」
「ミサキ、君が好きだ」
私をまっすぐに見つめ、艶やかな甘さと熱を含んだ声で囁く団長の声。
団長の顔がどんどん近づいてくる。
団長の顔を直視するのが出来なくて、目を閉じる。
唇に団長の唇が触れる。
優しいのに熱くて・・・柔らかくて・・・
私の自制心も理性も・・・団長の熱情を感じる口付けに翻弄される。
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