落ちた恋

百合 一弘 ーゆり かずひろー

卒業

桜が舞っている。少し古さがある中学校の門には「卒業式」という看板が立っていた。

 「言わないと」


私、友希ゆきはそう呟いた。空は雲がかかっているようないないかぐらいの薄い雲が広がっている。周りの同級生たちは別れてしまう友人と写真を撮っているが私はそれどころじゃなかった。私は今日で初恋の猪村咲希いむらさきに会えなくなってしまうから。私の学力では到底届かない学校に進学することが彼女は決まっていた。だから最後に会える今日一か八かで思いを告げようずっと思っていた。だから帰ってしまう前に絶対声をかけたかった。


校庭を見回すと彼女の姿が見えた。校門に向かって歩いていることに気がつき走った。でもその足を後5mってところで止めた。


彼女の隣にはクラスの男子が居た。


「これからよろしく」


「うんよろしくね」


という声が聞こえた。私は瞬時にこの2人が付き合ったことを理解した。会話の内容もそうだが彼女の雰囲気が「付き合った」と告げていた。3年間追い続けたんだ。彼女がどんなことを考えてるかは大体わかる。


彼女は幸せそうな笑顔だった。私が言おうと思っていた「好きです。よければ付き合ってください」と言う言葉を伝えることで彼女の笑顔を壊してしまう。だから喉まで出ていた言葉を必死に飲み込んだ。代わりに出てきたのは涙と


「またね、大好き」


だった。


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落ちた恋 百合 一弘 ーゆり かずひろー @kazuhro

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