第2話 きっかけ
各々が席に着き終わり、机の上に置かれているプリントを見る。
ほんの2、3分たった頃...
ガラガラ…
扉の先に視線を向けると、先程担任発表を受けた...何先生だっけ。
(昔から人の名前だけは覚えるのが苦手なんだよな)
静かに黒板へと足を運び黙々と名前を書く。
「えぇ、改めて自己紹介からかな、私の名前は道成 安和(みちなり やすかず)と言います。年齢は25歳で、
趣味は本を読むことと、旅行に行くことです。
そうだなぁ..最近は京都に行ったかな、
あぁそうそう清水寺の舞台ってね、少し斜めになっていて実際に立つととても落ちそうで怖かったんだよね。それから・・・」
教室中がざわめいた。
そうなるのも仕方がない。
話の話題が自分の趣向に変わった途端、先生は人が変わったように話す。
静かであまり話すイメージがない先生の話はすぐに終わると思ったからだ。
周りの生徒は自然と関わり方に気をつけなければいけないと感じたことだろう。
自分の話について来れていないとやっと理解した先生は話をやめ、恥ずかしそうに椅子に座った。
「ご、ごめんね。昔から自分の好きな話題になるとつい...」
クラスのみんなはくすくすと笑っていた。いつの間にかシーンとした雰囲気から賑やかな雰囲気へと変わっていった。
先生から自己紹介の場が設けられ、出席番号順に進んでいく。
一人一人が名前・趣味・好きな食べ物・高校で頑張っていきたいことを言っていき、気づけば自分の番がもうそこまで迫っていた。
番が来ると僕は深く深呼吸をし、席を立った。
「えぇっと、僕の名前は久保寺 蒼司(くぼでら あおし)です。
趣味は音楽を聴くことで主に洋楽を聴きます。好きな食べ物はコロッケで
高校では写真部に入って賞を取りたいです。」緊張したが、なんとか自己紹介を終えることができた。
全員の自己紹介が終わり、春休みの宿題をそれぞれの教科で提出したと同時に下校を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「またねぇ〜」「さようなら〜」
という声が教室内で広がる。僕もさりげなく手を振り、教室を後にした。
放課後には写真部の部活動体験にお邪魔させてもらった。
写真部は三年生が10人、2年生が5名の計15名で月・水・金の週3日で活動している。僕の前で部のことを説明してくれている彼女の名前は
越智水 緋奈(おちみず ひな)と言い、この峰内高校写真部の部長である。
今日体験に来たのは僕だけで、心細い気持ちの反面、どこかほっとしている。
先輩方は、体験に来たのが僕だけだったのもあり、大会の日時や今までの入賞記録、写真部としての楽しさについて一つ一つ丁寧に教えてくれた。
僕も負けじと今まで撮った写真を見せる。
先輩たちの反応を見て僕はホッとした。
写真部といった観点で写真を見られていれば、厳しい評価をされ、罵倒されていただろう。
だが先輩たちは非難の言葉も変な表情も見せることなくただ写真を眺めていた。
そんなこんなで楽時間を過ごしていると
「よし」と言う声と共に急にカメラを渡され
「試しに何か撮ってみな〜」
と言われたと同時に先輩方に勢いよく腕を引っ張られたり、背中を押されて教室から
閉め出された。
咄嗟の出来事で脳が理解するまでに時間がかかった。
実際、写真部に興味を持ったのはこの学校の部活動紹介の時で写真はスマホで少し撮るくらいでカメラで撮ったことは一度もない。
幸い、カメラの使い方はさっき説明してもらったのでわかるが、何を撮れば良いのだろうか。
しばらく悩んだ末に、夕陽を撮る事にした。単純に綺麗だったのもあるがこれ以上時間をかけるわけにもいかない。カメラのレンズを通じて夕陽を写す。
それにしても本当に綺麗な夕陽だ。
前に住んでいた場所では、こんなに綺麗な夕陽を一生見ることはできなかっただろう。
僕は無我夢中でシャッターボタンを押した。
思ったよりも時間を使ってしまったので、急足で写真部の部室へ戻る。
ドアを3回ノックし、「失礼します」と言い、ドアを開ける。
中に
「おかえり〜随分と遅かったね。てっきり100万以上したカメラを君に盗まれたのかと思ったよ。」
「え、このカメラって先輩のだったんですか!?」
「そうだよ〜私のカメラさ。で、何を撮ったの?」
「夕陽が綺麗だったんで夕陽を撮りました。あ、あとカメラありがとうございました。」
そう言い、先輩にカメラを返す。
「おぉ〜これが君の撮った夕陽か。なかなかいいじゃん。」
そう言い、先輩は笑っていた。
下校のチャイムが鳴り、先輩と一緒に教室を出る。
「あの、今日はありがとうございました。また来ます。」
すると先輩は笑い、
「君の入部を待っているよ。またね。」
と言い、学校を後にした。
通学路を進み、家へと帰ろうとした時だった。
後ろから「ねぇ君!一緒に帰らない?」と声をかけられた。
振り返ってみるとそこには一人の女の子がいた。
自分と同じ制服を着ていたので、同級生なのはすぐわかった。
にしても初対面の自分に声をかけ、一緒に帰ろうとするのかはわからなかった。
不思議だ。彼女は誰にでもこんなことをする性格なんだろうかと勝手に想像してしまう。
「どうして?僕と君は初対面のはずだけど...」
思わず聞き返す。すると彼女は
「ん?何言ってるの、私たち知り合いでしょ?」
何を言っているのかわからない。知り合い?そんなはずはない。知り合いならすぐに気づいているはずだ。彼女のことは何も知らない。知っているわけがない。
「何も...知らな、い、」
突然、激しい頭痛に襲われ、気を失いかけたと同時に彼女はこう言った。
「まだ早かったか、またね...」と言い、去っていった。
そして、僕はその場に倒れた。
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