第1話 心機一転

prrr...

「おかけになった電話を/ㇷ゚ッ」

「まったく、今日から息子が新生活を始めるっていうのに、ほんとうちの母親は...」

そう呟きながら部屋を見渡す。

引っ越して2日目の新居には未だ段ボールの山が築かれている。

昨日取り付けたばかりのカーテンを開き、日の光を浴びる。

これが唯一のモーニングルーティーンである。朝日を浴びると、清々しい気持ちに置き換わる。

「ん?やべぇ!?そろそろ出ねぇと」

忘れ物がないか、と一瞬頭をよぎったが、そんなことを気にする暇もなくバタバタと家を飛び出した。

だんだんと迫ってくる発車時刻に急かされながら足を動かす。駅に着いた時には既に電車が到着したところだった。

無事に乗ることができたと安堵し、席に座る。しばらくして、ふと気づく。

ゴソゴソ...

「やっぱり、、」

思わず冷や汗をかく。

「入学早々怒られ確定かよ...」

突然バックを漁っては頭を抱えている光景を、周りの人はどう捉えているのだろうか。

「こんな時に親しい友達でもいれば話は別なんだろうけどw」

そう呟きながら、電車の揺れに身を任せる。

二駅ほど過ぎて、ようやく目的の駅に到着した。

駅のホームを抜けると、同じ制服を着た人達がちらほら見受けられる。学校までの道のりを確認しようにも、そんな術などある訳もないが故、今は彼らについてゆくのが正解だろうか?

賑やかな商店街を通り、町1番と言われている大通りを過ぎ、ようやく学校が目前となった。

「ここが、、、」

思わず息を飲んだ。

【峰内高等学校】と記されている大きなスクリーンが目立つ。

以前住んでいた「あの地域」にいてはここは自身にとって無縁だっただろう。

正門の前にはたくさんの生徒がいて数の多さに圧倒される。

「新入生のみなさーんこちらでーす!」

と、おそらく生徒会委員であろう人が僕たちを体育館へと案内してくれた。

中へ入ると、在校生が拍手で迎えてくれた。

「入学おめでとう!」

と言われ、自然と緊張がとける。

清冽されていたパイプ椅子に座り入学式が始まる。

「一同起立。これより、第60回 峰内高校の入学式を始めます。」

緊張した雰囲気が辺りに漂った。

開会宣言に続いて校長先生の話が始まる。

「えぇ、まずは皆さんご入学お...」

正直長すぎてどんな話だったか覚えていない。

(「どこの学校に行っても校長先生の話は長いものだな。」)

そう思っていると生徒会長の話に移った。

「改めまして、皆さんおはようございます。この度は、ご入学おめでとうございます。わたしたち峰内高校生徒は皆さんが来るのをお待ちしておりました。最初はわからないことが多く、不安が続くと思いますが、困ったことがあれば我々を頼ってください。改めて本日はご入学おめでとうございます。」

と抑揚のある声に会場全体が包まれる。

生徒会長というのはここまで素晴らしいのか。

誰もがそう思っただろう。

「校歌斉唱」

そう言われ、1人の女性が演奏を始めた。

ピアノの澄んだ音色が鳴り響く、その旋律は校歌とは思えないほど繊細で、とても美しいものだった。

歌い終えると、各クラスの担任と関係職員が発表された。

うちのクラスの担任は道成安和(みちなり やすかず)と言い、黒い髪で眼鏡をかけていて、学校の先生と言った雰囲気を醸し出している。担当教科は数学で、どんな風に授業が進んでいくのかを考えていた。

全クラスの担任発表を終え、式が終わった。

生徒会の指示に従い、中央階段を通り教室へと着いた。

今日からこの場所で、ここで 生活していく。

深く息を吸い深呼吸をする。

「ふぅ...」

沓摺(くつずり)を股越し足を一歩踏み込んだ。

そして黒板に貼ってある座席表を確認し、席へと向かう。

場所なんて最初はどうでもいいと思っていたのだがまさかよりによって1番前の先生の教卓の前とは...なんてツイていないのだろう。

「(まぁ変わりようのないことに文句を言ったって仕方がないしな。)」

そう思い、席に座った。















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