第2話 山田末と申します/日向未来と申します/野崎翔太と申します/

彼はよくこんな夢を見るんだ。夢のようで、でもまるでその場にいるかのように感じる。だんだんと、彼は恐怖を理解し始めた。


「子どもたち、今日は初日だから、遅刻しちゃいけないよ」(目をこすりながら)


山田海は、目をこすりながら寝起きの末の頭を撫でると、兄や姉たちはすでに食卓に座って、海が作った朝食を食べていた。


「大丈夫だろう?彼はもうああだから、遅刻してもどうってことないよ」(二男の超嫌な顔)


「うんうん、末はまるでロボットみたいだもんね。遅刻しても、彼にとっては関係ないでしょう?」(二女も同調)


「あなたたちは黙って、ちゃんと食事をして。末はあなたの弟で、あなたたちは僕の子供たちだ。仲良くして、僕にも楽をさせてくれる?」


食事の後、山田海は自分の中古車で彼らを学校に送った。今日は兄や姉たちの初日で、末が高校一年生になる初日でもあった。末には三人の兄と二人の姉がいて、長女は家で「かび」を生やしているし、三人の兄は高三で、一番下の姉は高二だった。(年齢:山田レイシャ>山田アキラ>山田ナガシ>山田ユウ>山田マサカ)


「アキラ、末の入学式は君に頼むよ。工場のほうでちょっと用事があるから、彼の入学のことは……頼むよ」(車にいる山田海がアキラを見た)


「分かったよ……」


山田アキラは末の長兄で、神冀高校の生徒会長を務め、高校全体で重要な役割を果たしているんだ。


初日、新生徒たちは校門の前に集まり、掲示板に自分のクラスを探していた。友達とまた同じクラスになることができた生徒もいれば、新しい環境に一人で来た生徒もいたけど、彼らの未来への期待は少しも減っていなかった。でも、末は一番特別だった。


校門の前に集まる人達の隣で、アキラは末の隣に立って、たまに文句を言ったりした。普通は、ぼんやりしている末は黙っていただけ。


「マジかよ、新学期が始まるってのに、生徒会の仕事は山のように溜まるし」(彼は横の末をちらりと見た)


「うん」


「末、新しい学校どう?」


「うん、まあまあ」


「お前は『うん』以外の言葉を知らないのかよ?」


「うん。知らないし、知りたくない」


「はあ、しょうがないな。お前はそのまま……孤独な一生を送りな」


(この会話の間、末は全程表情を変えることなく)


アキラは彼を一人に残して、裏口から学校に入った。


末は彼が視界から消えるのを見送った。彼は平気だった。だって、彼は元々そんな人間だったし、誰かが必要なわけじゃない。


しばらくして、校門前にいた人々が少しずつ減り始める頃、末はやっとゆっくりと学校の中へ足を進めた。


「なんで人間は学校に来るんだろ?疑問がいっぱいあるよ。」


空いた学校を見渡し、彼は突然一つのことに気づいた——そう、彼は遅刻していた。


彼は焦らなかった。だって、彼はルールなんてどうでもいいし、ただ……仕方ないだけ。


一つの角を曲がったとき、彼はタバコの匂いを感じた。でも、それほど濃くはなかった。彼は顔を横に向けたら、体の太った女性が窓際に寄りかかってタバコを吸いながら、何かぶつぶつ言っているのが見えた。


彼は一瞬だけ見た後、すぐにその場を離れた。だって、彼はもう遅刻しちゃったんだもん。


「学校で……タバコを吸ってもいいんだろか?」(末の疑問)


「みなさん、今日から私は皆さんの担任になります。私の名前はミナヅキ……」


(新しい担任が教室で自己紹介している)


彼は教室の前に立って、扉を開けるかどうか迷っていた。


「やっぱり……遅刻しちゃった……」


(本当に最悪)


彼は扉を開けるかどうか迷ってた。


「彼女は……話してるんだから、入ってもいいのかな……」


ギィ——


彼が扉をノックする寸前に、扉が開いた。


「え?この子は……誰だっけ……」


彼は顔を上げて、その先生を見た。


「え……?」


「ええっ?!」(末の驚き)


どうやら、さっき隅でタバコを吸ってた女性だった。


「先生、ごめんなさい……遅刻しました」


「僕は……山田末です」


「大丈夫よ、中に入って、挨拶して座りなさい」


ミナヅキ・ミユは彼の肩を軽く叩くと、校長室に向かって歩き出した。


末はその場に呆然と立ち尽くした。だって、教室はもう満席だったんだもん。


彼はさっきタバコを吸ってた女性が自分の担任だったことに気づく前に。


「みなさん、こんにちは、僕は山田……末です」


彼は教室に入って、簡単に自己紹介をした。彼は末だ。


教室には二つの空席しかなかった。彼は最後列の窓際の席に座ると、すぐに窓の外をぼんやりと眺め始めた。


さっきまで騒がしかった教室は、一瞬のうちに静寂に包まれた。「彼が山田末だったんだ……」


「え、かっこいいけど……なんで……」


「聞いたことあるよね……」


「学生会長が彼の兄だって聞いたよ……」


「もう、俺の高校生活……」


「彼の隣に座らなくてよかった……」


ザワザワ——


教室中で、皆が末のことを話し始めている。


でも、一人だけ、末の真ん前に座っているその人は、全然興味を示さなかった。


「おい、お前、ここに座る気か?」


「聞いてないのか?彼が……」(超小声で)


「ふん、関係ねえよ」(軽い口調)


この言葉を聞いたとき、末は少し驚いて、その生徒を見た。


細長い体、耳にかかる髪、小さな頭、尖った耳……


「え?尖った……耳……」(末はその尖った耳を見た)


正直言って、最初は猫かと思った。


「信じてないでしょ?マジで言ってるんだよ……」


「僕は野崎翔太だ。今後ともよろしくな!」(翔太は振り返って末に手を差し出した)


「他の人には見えないの?」(末の疑問)


翔太の手を見たとき、彼は数秒間固まってしまった。


「えっと…ああ……」 (彼のその行動に、末は数秒間呆然としてしまった。)


彼は天生のものだと思ったので、それ以上考えることをやめた。ただ、翔太は彼に奇妙な感覚を与えた。


さっき入ってから今まで、教室は……騒がしかった。


しばらくして、教室の扉が開いた。正確には、扉が開いたのではなく、ぶつかって壁に当たった。扉が壁に当たって、大きな音がした。さっきまで騒がしかった「市場」は、また急に静かになった。


教室に残る余韻の中で、彼女は入って来た。彼女はミナヅキ・ミユじゃなかった。彼女は銀色の髪の女の子だった。


「ご、ごめんなさい……遅刻しちゃいました……」(息を切らして)


(少し恥ずかしそうに教室に入って)


「私の名前は……日向未来です。初めまして……今後ともよろしくお願いします!」(可愛らしくお辞儀をした)


「わあ、かわいいなあ……」


「うん、うん、理想のタイプかも……」


「かわいいなあ、まるで人形みたい……」


ザワザワ——


教室中で、彼女の容貌に釘付けになった。


(彼女は空席を探している)


(クラスの皆は未来と隣に座りたいと願っていた)


満員の教室を見渡し、彼女は一瞬空席が見つからない。先生に尋ねようとしたとき、最後列の一つの空席を見つけた


「今日は……本当に最悪な一日だ……」


彼女は、この「自分のための」席に座った。


末には同桌ができたんだ。うん、彼女は末の隣に座った。


「えっ?!」


「彼と一緒の席?!」


「この状況、どうなってんの……」


(周りには、みんなの疑問の声がいっぱい)


未来は、窓の外を見つめている末を見て、ためらいながら声をかけた。


「あ、あの……こんにちは?」


末は、まだ窓の外を見つめていて、まるで聞こえていないみたい。


「あの……同学?」


彼女の声が二度目についたとき、末はやっと我に返って、ゆっくりと頭を振り向いた。彼の目が彼女とぶつかったその瞬間、彼は固まってしまった。


これは彼が初めて見る、異なる色の瞳だったから。


「あ、あの……こんにちは」(彼は彼女の異色の瞳を見つめながら)


彼女も固まってしまった。だって、彼女にとっても、こんなに白い肌の男の子を見たのは初めてだったし、彼を見た瞬間に、なんだか不思議な感じが湧いてきた。


「目……水色と青緑?」


「えっ……何言ってるの?」


「あ、何でもない……」


「目のことかな?」


「ううん……ええと……」


彼女が生まれてから今まで、異色の瞳について聞かれることが何度もあったから、末の興味ももう驚くことじゃなかった。


「うん、天生のものなんだよ」


「天生の……」


「うん、変な話だけど、私の両親にはこんな変な遺伝子がないんだよね」


「じゃあ……髪の色も……銀色……」


「ああ、髪?それは染めたんだ」


「あの……名前は?」


「僕は……山田末……」


「末くん……」(彼女は両手で頭を支える)


「あの……うん……」(彼は彼女を見るのが恥ずかしくて)


(彼女は平気な顔で彼の名前を呼んだ)


「うん……いいなあ……」


「えっ?」(末は「いいなあ」という言葉を聞いた)


「ああ、何でもない。私は日向未来って言うの。末末くん、今後ともよろしくね」(彼女はにこにこと言った)


「あ……うん……」(末は顔を赤くする)


突然の静寂——


「ねえ、あなたの肌、めちゃくちゃ白くて、かわいいね」(未来が静寂を破った)


「えっ?」(末は聞こえていない)


「ああ、何でもない」(未来はにこっとする)


再びの静寂——


「ねえ、私たち、前に会ったことあるんじゃない?」


「うん……たぶん、ないと思うけど……」(考えながら)


「えっ?!お前もそんな感じがするの?」


「うん……不思議な感じだね……」


「ううん、別に……」


「うん、じゃあいいや」


(本当に静寂に包まれた)


(末はまた窓の外を見つめる)


彼は、この子は前に会ったことがあるような気がするのに、何とも言えない感じがする。それは……不思議な懐かしさ?


(彼は未来を見つめ直す)


未来が小声で歌を歌いながらいるのを見つめながら、彼の瞳が少しずつ大きくなっていく。彼にとって、こんなに誰かをじーーーっと見つめるのは初めてだった。目尻から眉の先、鼻の先から首元まで、どこをとっても、骨の髄まで愛らしい。


「う~ん……この変な感じって、いったい何なんだろう……」


彼は心の中でそう思っているのに、急に自分自身に疑問が湧いてくる。この初めての感覚って、いったい何なんだろう?なんで彼女を見ていると、どんどこどんどこ、心臓がドキドキしちゃうんだろう。


「もう~……この感じ、消えてくれ~……」

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