第2話 帰り道

告白を終えた後も、輝人と華乃は駅のホームで並んで立っていた。お互いに手を繋いだまま、離れるのが惜しくて。


「……なんか、夢みたい。」


華乃がポツリと呟く。


「夢じゃないよ。」


輝人は華乃の手を優しく握り直した。指先がほんのり冷たくて、それがなんだか愛おしかった。


「ほんとに……好き?」


「当たり前だろ。」


「ふふ、よかった。」


華乃は少し恥ずかしそうに笑って、輝人の肩にもたれかかった。そんなことをされたら、ますます心臓がうるさくなる。


電車がホームに滑り込んできた。2人が乗り込んで、ドアが閉まる。車内は人が少なくて、静かだった。


「これ……手作りだから、帰ったら食べてね。」


華乃が紙袋を指でトントンと軽く叩く。


「手作り……?」


「うん。頑張って作ったの。だから、ちゃんと感想教えてね?」


「……わかった。めちゃくちゃ楽しみ。」


「そんなに期待されたら緊張するなぁ。」


笑い合いながら、2人は寄り添うように座った。窓の外には、夜の街の光が流れていく。


輝人は、ふと心の中で思った。


(これからも、ずっとこんな時間を過ごせたらいいのに。)


次の駅に着くと、華乃が輝人の腕をちょこんと掴んだ。


「ねぇ、もう少しだけ一緒にいちゃダメ?」


「……ダメなわけないだろ。」


駅を過ぎても、2人はまだ帰りたくなかった。バレンタインの夜は、まだ終わらないままでいた。

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