Valentineの帰り道

輝人

第1話 Valentineの告白

2月14日。朝から街はバレンタインムード一色で、駅のコンビニには可愛くラッピングされたチョコが並んでいた。輝人は電車に揺られながら、なんとなくそわそわしていた。


(華乃、チョコくれるかな……?)


思わずそんなことを考えてしまう。普段ならこんなことでドキドキするなんてありえないのに、今日は特別だった。


学校が終わった後、輝人は駅で華乃を待っていた。昨日のLINEで「放課後、少しだけ時間ある?」と聞かれ、期待しない方がいいと思いつつも、やはり心は浮ついていた。


しばらくして、制服のコートを着た華乃が小さな紙袋を手に持ちながら走ってきた。


「待たせちゃった?」


「いや、大丈夫。」


息を整えるように深呼吸した華乃は、少し頬を赤らめながら紙袋を差し出した。


「これ……バレンタインのチョコ。」


「ありがとう。」


輝人が袋を受け取ると、華乃はぎゅっと手を握りしめ、何かを迷うように唇を噛んだ。


そして、意を決したように顔を上げると、小さな声で呟いた。


「……私ね、輝人のことが好き。」


一瞬、時間が止まったような気がした。


華乃は視線をそらして、さらに続ける。


「高中のときからずっと、ずっと好きだった。でも、言えなくて……でも今日は、どうしても伝えたくて……」


輝人は心臓が爆発しそうなほど高鳴るのを感じながら、華乃の瞳を見つめた。


「俺も……華乃のことが好き。」


その瞬間、華乃の目が大きく見開かれ、次の瞬間にはふわりと笑った。その笑顔があまりにも愛おしくて、輝人は思わず手を伸ばし、そっと華乃の手を握った。


「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」


「うん……私も。」


夜の駅のホーム。チョコレートよりも甘い、2人だけの特別なバレンタインが、静かに幕を開けた。

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