第3話 森の迷宮
密集した竹の群落は数メートルで終わり、そこから先は常緑樹を中心とした林になった。竹林よりは進みやすいが違和感は募る。
「おかしいな。こんなに広い場所でしたっけ?」
その違和感を口に出したのは望月君だった。片手にスマホを持ちながらもう一方の腕で枝を払っている。意外とやるじゃん、望月君。
「圏外?」
望月君は不審そうにスマホから顔を上げるとつぶやいた。やっぱりポンコツか。圏外なわけないだろう、と思ってスマホを開く。
「圏外だわ」
やはり何かがおかしい。闇塚に入る前にスマホを確認したらきっちりアンテナは三本立っていたし、地図アプリも使えたのだ。たった数十メートル離れただけで圏外になるとは。それともこの森が障害になっているのだろうか。そう考えてもう一度辺りを見回す。
背中に鳥肌が立っているのがわかる。
「先生、ここの木って変じゃないですか? 先端が見えないんですけど。それにスマホが圏外になっているのも変です」
古谷先生と望月君が上を向いて、息を呑んでいるのがわかる。どの木も虚空に向かって垂直に伸び、その先端は肉眼では確認できなかった。空を見上げていると、まるでこの場所が森の底のように思えてくる。光も届かぬ深海のように、闇で覆われた森の底。濃い闇は液体のように身体にまとわりつき、息苦しささえ覚える。
「出よう。確かに普通じゃ無い」
先生の声も心なしか震えている。
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