第2話 潜入

闇塚の周りは竹が密集していて入り込むのも容易ではなかった。警察が中を捜索したということだったが、竹や木を切った後もなく、一体どうやって入ったのかもわからなかった。

「ここなら通れそうだ」

古谷先生が立ち止まり指をさす。確かに竹に隙間があり、なんとか通れそうだ。だが、その先は一段と闇が濃い。

「罠かもしれません」

勇気を持って言ってみた。

「罠? 誰がそんなことをするんだ? 警察かそれとも美紀ちゃんか?」

真面目な顔でそう聞かれると答えに窮する。望月君、君は意地悪なのか底抜けに能天気なのか、どっちなんだい?

「闇塚です」

真面目な顔で答えておいた。反応は無かった。

「行くしかないだろう」

古谷先生を先頭に、私、望月君の順に足を踏み入れる。望月君が中に入ったとき、空気が変わった。古谷先生が後ろを振り返る。私も釣られて振り返る。鈍感で能天気な望月君ですらキョロキョロと辺りを見回している。

先程までうるさいくらいに鳴いていたカエルの声も、風が竹を揺らす音も、一切の音が止んだ。

「やれやれ」

誰にともなく呟く。

「何か視えるか?」

古谷先生が尋ねる。

「闇が濃くなりました。息苦しいくらいに」

「少し涼しくなりましたね」望月君が気楽に応える。心底羨ましい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る