第22話 王宮と呼び出し(3)
巨大な柱が並ぶ荘厳な空間。赤い絨毯が階段から玉座へと続く、国王陛下のおわす場所。
玉座の前、数名の火王国出身者の高官が恭しく屹立している。
ヴァツラフ王がそこにいた。アレンがすでに対峙している。
案内されたフォトナがおずおずと足を踏み入れた。
「ヴァツラフ陛下、フォトナをお連れしました」
式典の時には豆粒程度だった王だが、今はこちらまで威厳が漂う。
近くで見るとやっぱ……怖いな。
王は重く響く声で口を開いた。
「フォトナ・アストリア だったな」
さすがに圧倒されたフォトナがはい、と答える前に続けた。
「グリニスト帝国に行く気はあるか」
はい?
高官が代わりに伝える。
「ヴァツラフ陛下より、アレン王子をグリニスト帝国に帰還させるようご命令がありました。」
フォトナ様もご同行なされよと仰せです」
ゆっくりと王が語り始める。
「真犯人を見つけ出すと申したそうだな。
結構なことだ。
ちょうどいい。
……宣戦布告だ」
高官達がはっとして王を見た。
「よい。この者には話す。
あの時、あの者から、我ら連合国は宣戦布告を受けたのだ。
これは民には伝えぬ。
―――そなたも見ただろ。あの力の誇示を」
圧倒的な魔力の塊、黒竜を前にした根源的な恐怖を思い出す。
「
気だるげに王が首を傾げ、アレンを指した。
「命令ではない。貴殿が決めたまえ。
―――まあ、
お前、そんな扱いだったの……?
押し黙るアレンにいつもの威厳はなかった。
「謹んで―――お受けします」
フォトナを見る王は眉一つ動かさない。
「先ほどは行政官の皆様にセレニア国の情報を知っているようにお伝えしてしまいました。
しかし……それは半分嘘です。私は自分でも自分が何か、よくわかっていない。
変に使えるようになった魔力、わけのわからない男。
セレニア国で教えられたわけではない。理由がわかっているわけではないんです」
ざわ…と高官達がざわついたのを構わず続ける。
「それでも私は、知りたい。そして、理不尽を超えたい。
何かできるかもしれないと、お考えいただけているのなら、必ずや期待に応えましょう」
アレンの何かを訴えかける視線をフォトナは無視し、承諾した。
「……出立は明日だ。
着けば客人としてもてなす。今宵は休め」
物々しい雰囲気の玉座の間から退室し、
結局アレンと言葉を交わせないまま、フォトナは王宮を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます